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ヴィクトリアマイルと川島信二騎手。
他界した先輩、叔父の思いを胸に。
posted2019/05/10 15:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Satoshi Hiramatsu
今週末にはヴィクトリアマイル(GI)が東京競馬場で行われる。古馬牝馬のマイルによる大舞台。ここにエントリーしているのがミエノサクシード(牝6歳、栗東・高橋亮厩舎)。川島信二騎手(36歳)が騎乗を予定している。
川島騎手は、1982年11月24日、東京都練馬区出身。3歳上の兄と3歳下の双子の妹がいる。
小学2年から始めた野球は中学を卒業するまで続けたが、小学校高学年の頃からは競馬にも興味を持ち始めた。最初は父の影響、そして、ゲームや漫画にも感化された。さらに……。
「中学校の担任の先生が競馬ファンで、千葉にある乗馬クラブを紹介してくれました」
行ってみるとクラブの先輩が競馬学校に合格した事を教えられた。
同じ頃、ナリタブライアンとマヤノトップガンが壮絶な叩き合いを演じた阪神大賞典をテレビ観戦。感動し、本気で騎手を目指すようになった。
中学3年の時に競馬学校を受験すると、見事合格。関東の所属を希望している同期の多くが関係者の二世であることを知ると、あえて関西を希望し、栗東・安藤正敏厩舎から2001年にデビューを果たした。
安藤厩舎で渡された1本の鞭。
「安藤厩舎に来た最初の日に1本の鞭を渡されました」
以前、厩舎に所属していた先輩騎手が使っていた鞭だった。
先輩の名は岡潤一郎騎手。
1988年にデビューした岡騎手は、4年目の'91年にはリンデンリリーを駆ってエリザベス女王杯(GI)を優勝。将来を期待されるジョッキーだった。
しかし、'93年1月、レースで騎乗中の馬が故障を発症。馬場に叩きつけられて重傷を負った。そして、その約3週間後、僅か24年の生涯に幕を下ろした。
「安藤先生から『頑張りなさい』という言葉と共に、岡さんの鞭を渡していただきました。岡さんのようにGIを勝てるジョッキーにならなくてはいけないと心に誓いました」