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白鵬が貴景勝に出した注文を考える。
突き押し相撲は安定感が無いのか。
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph byKyodo News
posted2019/05/11 15:00
突き押しで大関に昇進した貴景勝が、ここからどんなスタイルでさらに上を目指すのだろうか
連勝も連敗も多い力士は全体の2割。
最初に、3連勝・3連敗が共に平均値を上回る力士の総数は、564人中111人であることが分かった。比率で言えば、全体の19.6%。連勝も連敗も共に多い力士は全体の2割ほどということだ。
111人の中で、連勝比率が連敗比率を上回っているのはたったの13人だ。実は力士全体を見ても、勝率が5割を上回っているのは20.7%に過ぎない。これは、大きく勝ち越す上位陣ほど長期にわたって活躍するためだ。
負け越しよりも勝ち越しが多ければ、番付は上がる。このサイクルが続けば、大関昇進が叶わなくとも三役付近にいることになる。だが、このような力士は僅かだ。
勝率が5割を切る力士は、三役以下の地位で壁に直面する。幕内上位から十両下位を行き来する存在と言えるだろう。
番付の構造を考えると、連勝比率が連敗比率を上回りにくいのは間違いないが、このデータでは「コンディションが良ければ連勝し、悪い時は連敗する」というツラ力士の存在は確認しづらい。
更に、勝率5割を切る「ツラ力士」の上位総当たり(前頭3枚目以上)での連勝・連敗について調べた。
総当たりでの取組経験がある力士は65名、この中で3連敗の比率が3連勝の3倍以上ある力士がなんと51名、この比率が2倍以上となると60名と、ほぼ全ての力士が上位では連敗が多く、連勝が少ないということが判明した。
このことから分かるのは「ツラ力士」が記録している連勝・連敗は、勝てる位置で連勝し、負ける位置で連敗するという実力通りの結果を示すものであり、このデータからツラ相撲の存在を確認することは難しい。
突き押しがツラ力士に多いわけでもない。
そして「ツラ相撲」は、本当に突き押し相撲が多いのか? という疑問を検証した。
これには前述の、昭和33年以降の関取経験者564人に占める突き押し相撲の力士の比率を算出し、そして「ツラ力士」の中から突き押し相撲の力士の比率を比較する。もしツラ相撲と突き押し相撲との間に相関関係があるのであれば、力士全体の中での比率よりも「ツラ力士」の中での突き押し相撲の力士の比率が高くなるはずだ。
結果は、全力士の中の突き押し相撲の力士の比率は26.5%であり、「ツラ力士」の中の突き押し相撲の比率は26.1%ということで、両者がほぼ同じだった。
つまり、突き押し相撲だと連勝・連敗が多くなるというデータは出ず、通説が覆される結果となった。