酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
宮西尚生の300ホールドは世界一?
実は日米で違う「中継ぎ」の地位。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/05/08 17:00
必殺のスライダーを駆使してセットアッパーを務め続ける宮西尚生。日本ハムのブルペンには欠かせない。
50試合登板の投手が147人!?
メジャーは、先発の投球数には極めて神経質である。100球を超えて投げさせることはめったにない一方で、救援投手、とりわけセットアッパーの扱いはかなりぞんざいだ。
2018年、NPBでは50試合以上登板した投手は74試合登板のヤクルト近藤一樹を筆頭に38人だった。
これに対しメジャーでは50試合以上登板した投手がなんと147人。最多はマーリンズ、ダイヤモンドバックスで合わせて82試合に登板したブラッド・ジーグラー。同じダイヤモンドバックスの平野佳寿は、自身キャリアハイの75試合に登板したが、上にはまだ6人もいた。
メジャーは162試合、NPBは143試合。チーム数も多いからたくさん投げる投手も増えるということかもしれないが、ペナントレースの期間は同じ半年である。セットアッパーの労働環境はMLBの方がかなり過酷だといえよう。
MLBのセットアッパーがぞんざいに扱われるのは、端的に言えば「数が多い」からだろう。先発やクローザーができる投手は数が限られているが、中継ぎはたくさんいる。故障すれば、よそから連れてくればいい。
レッドソックスでセットアッパーとしてあれほど活躍した田澤純一が、少し低迷するとあっさりリリースされたのもそういうわけだろう。なおかつ年俸も安い。シビアな市場原理が働いているのだ。
浅尾のMVPで中継ぎに脚光。
それを考えれば、NPBの方がセットアッパーの扱いは少しだけ良いといえるだろう。
2011年には52ホールドポイント(45ホールド)を挙げた浅尾拓也がMVPに輝いている。浅尾の栄冠で、日本の中継ぎ投手のステイタスはぐっと向上した。
宮西はデビューから11年連続で50試合以上登板している。これを上回るのは日本最高のクローザー岩瀬仁紀の15年連続だけだ。
山口鉄也は2年目から9年連続60試合以上登板を続けていたが、2017年にこれが途切れ、2018年限りで引退している。
浅尾拓也はMVPをとった2011年の79試合登板をピークに、以降は40試合以上登板することがなく、やはり2018年に引退している。
まさにセットアッパーは「体力、気力が尽き果てるまで」ひたすら走りぬくような難行苦行なのだ。