酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
宮西尚生の300ホールドは世界一?
実は日米で違う「中継ぎ」の地位。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2019/05/08 17:00
必殺のスライダーを駆使してセットアッパーを務め続ける宮西尚生。日本ハムのブルペンには欠かせない。
宮西のホールド数は世界一か?
調べていくと、宮西のホールド数は「世界一」かもしれないということを気づいた。
<5月7日時点のMLB歴代ホールド数5傑>
1.アーサー・ローズ 231ホールド(1991-2011)
2.ホアキン・ベノワ 211ホールド(2001-2017)
3.タイラー・クリッパード 207ホールド(2007-インディアンス)
4.ジョー・スミス 206ホールド(2007-2018)
4.マット・ソーントン 206ホールド(2004-2016)
アーサー・ローズはイチローのチームメイトだったこともある、ずんぐりした黒人投手だ。40歳で初めてオールスターに選出された遅咲きでもある。
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MLBではホールドを1999年から記録するようになった。ローズは12シーズンで231ホールドを記録した。単純に比較すれば宮西の方が70ホールド以上も多い。
この時点で宮西のホールド数は「世界記録」ではないのか! と色めきだったが、実はMLBとNPBの「ホールド」の定義はかなり違うのだ。
日米でホールドの定義が違う。
簡単に言えばNPBの場合、「味方がリードしている場合」もしくは「同点の場合」にマウンドに上がって、その状態を維持して降板すれば、ホールドがつく。しかしMLBは「同点の場合」だと、失点しなくてもホールドはつかないのだ。
昨年、宮西は37ホールドを記録したが、9ホールドは同点でマウンドに上がって記録したものだ。宮西の記録はMLBなら28ホールドということになる。
解釈に違いがあるので、宮西のホールド数は純粋な世界一とは言えないのだろう。
それでも、宮西が素晴らしいセットアッパーであることには変わりない。NPBではホールド+救援勝利を「ホールドポイント」として設定し、これが最多の投手を「最優秀中継ぎ投手」として表彰している。宮西は2016年と2018年の2回、このタイトルを獲得している。
一方、メジャーでは「記録」として残り、ホールドが多い投手は評価されるものの、最多ホールドは表彰項目にはない。
日本人投手では、2004年にサンディエゴ・パドレスの大塚晶則が34ホールドでナ・リーグ1位になっているが、これはタイトルとはみなされていない。