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湘南の会長が語る「Jリーグと平成」。
理想は、地域の公共財になること。
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2019/04/30 11:00
湘南ベルマーレは、Jリーグの酸いも甘いも味わったクラブである。そんな彼らだからこそ語れることがあるのだ。
「子どもを大人にし、大人を紳士にする」
──社会が変わっても、ベルマーレが地域に必要なものとして在り続けることができる、と。
「日本サッカーの父と言われるデットマール・クラマーさんの言葉に、『サッカーは子どもを大人にし、大人を紳士にする』というものがあります。本当にそうだなあ、とつくづく思います。味方の選手をサポートするとか、ミスをカバーするとか、危険なスペースがあったら埋めるとかいうサッカーの常識を教えていけば、社会性が身についていく。立派な大人になれる指導はイコール、ベルマーレが強くなるための指導でもあると」
──曹貴裁監督の指導や言葉は、まさに人間としての本質を問うものが多いです。
「昭和から平成になり、選手の基本技術は本当に上がりました。止める、蹴るだけでなく、曲げて蹴ることのできる選手も例外ではない。では、そこから先は何が大切かというと、サッカー人として生きていくために何をするべきかを教えられるか。ベルマーレのようなチームは試合に出る11人だけでなく控えの選手も含めた18人が、もっと言えばチーム全員が同じ方向を見てプレーしなければならない。実はサッカーとは本質的にそういう競技で、だからこそ自分の仕事だけでなく全体像を絡めて考えて走る、味方のフォローができる選手を育てている。
守備の強いチームの選手は、紙一重のところで足が伸びる。それは、足が長いからじゃない。次のプレーを想像しているから。社会で気が利くねと言われる人材は、想定が早いから。先回りをして考えることができるからです。曹監督も今シーズンは『予測』という言葉を良く使っていますが、我々のチームも予測ができるレベルにまで来たと見ています」(後編につづく)