JリーグPRESSBACK NUMBER
憲剛も家長もいなければ「縦に速く」。
プランBで勝ちきる川崎の王者ぶり。
posted2019/04/29 17:00
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Getty Images
「あなたは何のために生まれて来たのか」
もし突然、こんな問い掛けをされたら、きっと多くの人は答えに困るに違いない。日常を過ごす中で、自分が生まれて来た理由や生きている意味を深く考える場面などそうそうないからだ。
しかし勝負に生きる者は違う。
4月23日に行われたAFCチャンピオンズリーグ蔚山現代戦、チームの公式戦13試合目にして今季初ゴールを決めた小林悠は、ゴールの瞬間に自分が生きている実感を噛み締めていたという。ある日の練習後、しみじみと、こんなことを漏らしてくれた。
「嬉しかったですね。あれは何ていうかな……点を取ることで、自分が『生きてるな』と感じたんです。自分がサッカーをやっている意味は、ゴールなんだなと。それを確認できました。あの感覚をもっと味わいたいです」
さらに言葉を続ける。
「キャプテンになって年齢を重ねていって、チームのことを考えなければならない中で、それでも1人のサッカー選手として幸せを感じるのはゴールなんだなと感じました。チームの勝利や若手が育つのも嬉しいけど、何よりも自分のゴールが自分を奮い立たせてくれる。サッカーが好きなんだなというところに戻れますね」
リーグ連覇中の王者を牽引するキャプテンにして、エースストライカー。だがシーズン序盤は、チームも自身も決して順調だったわけではない。小林悠が背負い続けた重圧も計り知れないものがあったのだろう。それだけに、彼を蘇生させたあの初ゴールの意味は大きかった。
迎え撃つは、豪華絢爛の神戸。
その今季初得点から5日後の4月28日。
川崎フロンターレは、ノエビアスタジアム神戸でヴィッセル神戸とのリーグ戦に臨んでいた。
神戸はアンドレス・イニエスタ、ダビド・ビジャといった世界的なプレイヤーが戦列に復帰。ルーカス・ポドルスキは負傷欠場していたが、それでも試合に出場できる外国籍枠5名をフル活用し、今季補強した山口蛍や西大伍の日本代表選手も健在。
リージョ体制が電撃的に終焉を告げ、吉田孝行監督が指揮を執って間もないとはいえ、まばゆい豪華戦力がリーグ随一であることに変わりはない。