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23歳リンスがキャリア初優勝。
MotoGPは4強時代へ突入か?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2019/04/18 07:00
予選7位からスタートした23歳スペイン人が初栄冠。スズキは約3年ぶりのMotoGP優勝となった。
超一流たちの結果次第で……。
リンスは、マルケスの弟とほぼ同じ道を歩んできた。
Moto3時代は、マルケスの弟が最大のライバルで、マルケス弟がチャンピオンになり、リンスの最高位は2位。Moto2時代はヨハン・ザルコが2連覇を達成した時代で、このときも総合2位が最高位。なかなかチャンピオンを獲れないライダーだった。
その後、スズキに抜擢されてMotoGPクラスに戦いの場を移しても、ロッシやマルケスのような圧倒的な才能を感じさせることはなく、ロッシやマルケスが超一流ライダーだとすれば、超一流ライダーの結果次第で勝つチャンスが巡ってくるライダーだと言ってもいい。
今回はマルケスが転倒、もうひとりの超一流ライダーのロッシに勝ったのだから、その点については評価できる。だが、全盛時のロッシだったら、リンスに負けることはなかったのではないかと思う。
スズキのマシンと高身長リンスの特徴。
とはいっても、今回のリンスの優勝は、彼が常に勝てる位置にいたこと、そして、スズキGSX-RRがその位置を走れる素晴らしいマシンだということを証明したことになる。
スズキのMotoGPマシンの良さは、ひと言でいえば「乗りやすさ」にある。昨年からは加速、最高速でも3強に大きく接近。いま、最強のマルケスが乗ったらまちがいなくチャンピオンを獲るだろうといわれるまでにパフォーマンスを上げてきた。
河内健テクニカルマネージャーは、今大会の勝因を、「GSX-RRはライバルに比べて特別に秀でたところはない」と謙遜するも、「バランスの良さ、それを乗りこなすリンスとのマッチングが良かったことだ」と分析した。
リンスの特徴は、MotoGPライダーの中でも身長の高い方だが、その身体を思う存分使って乗っていること。これは滑りやすい路面やウエットコンディションで有利になるが、F1サーキットでバンピーな路面コンディションが選手たちに不評なCOTAでも、そのメリットは生きた。
乗りやすいマシンという点ではヤマハがナンバー1と言われるが、今大会は、このサーキットを得意とするリンスが、40歳で2年ぶりの優勝に闘志を燃やすロッシを上回ったことになる。「バレがだんだん近づいて来たときに、今日はみんなを驚かせようと思った」という勝利への強い気持ちが初勝利につながった。