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チームも選手も変えた名将。
日本バレーにささげた6年間。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byJapan Volleyball League Organization
posted2019/04/23 17:00
退団セレモニーでイゴール(左)とともに笑顔を見せたアンデッシュシニアヘッドコーチ(右)。就任3年目に優勝に導くなど、チームの躍進の立役者に。
日本での生活に「満足している」
「約30年間ほとんどスウェーデンの外にいたから。この2年間はトミーにいろいろなことを教えて、彼はもう問題なく1人でやれるし、私は年をとった。もう70歳だ」
「(38歳の)イゴールはいつも、『年齢はただの数字にすぎない』と言っていましたよ」と言うと、アンデッシュは、「わかってるよ」と笑った。
「私は1つの世代を作った。高松(卓矢)、内山(正平)、近(裕崇)、古賀(幸一郎)……。まあ、古賀は私が来る前もいい選手だったけれど。それに傳田(亮太)、白岩(直也)。でもそろそろ次の世代がスタートしなければいけない。私の選手たちは、高松も内山も近も、もう30歳を越えてきている。彼らはまだいいプレーができるけれど、新たな監督が、新しい世代を育て、新しいチームを作っていかなければならない」
選手への愛着や離れがたさを漂わせながらも、日本で過ごした6年間に「満足している」と語った。
チームの“芯”をつくった。
チームとはこんなに変わるものかと、アンデッシュには、監督就任1年目から驚かされた。順位こそ前年と同じ5位だったが、内容がまったく違っていた。
それまでは、爆発力を発揮する時もあるが、崩れ出すと歯止めがきかず、無秩序な印象があった。しかしアンデッシュが来てからは、秩序立った堅実な試合運びができるようになった。迷った時に立ち返るべき“芯”ができたからだ。それは豊田合成の選手たちがよく口にする“コンセプト”である。
コンセプトとは、守らなければならない細かな約束事のようなもの。
例えば、相手ブロックが2枚揃った時は、アタッカーはまずブロックアウトを狙う。
二段トスを上げる時はアンテナまで伸ばさず、短めの意識で、ネットに寄せる。
レシーバーは必ずコートの中で構える。
ブロックは流れず、遅れた場合もまっすぐに跳んで、まっすぐに手を出す。
こうした無数の、基本的なコンセプトを全員が実行することにより、堅い組織ができあがっていった。
アンデッシュは意図の見えないミスに厳しく、ブロックにシャットアウトされたアタッカーに対しても、顔を真っ赤にして怒った。
「ブロックされるのはアタッカーのミス。キルブロック(ブロックポイント)は悪いアタッカーが生み出すものだ」
「勝負に行って止められたらしかたがない」というバレーではもう勝てないということを教わった。