マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
オープナーは球数制限に有効では?
大学野球の成功例から思いついた。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKyodo News
posted2019/04/16 08:00
2003年、大学日本一に輝いた日本文理大。その投手起用法はまさに「オープナー」的発想だった。
みんな1つは“武器”を持っている。
最初は、落胆も、絶望もしたという。
「ところがですね、よ~く見てると、やっぱり高校野球で“背番号1”を背負っていた選手たちなんですよ。こいつ、スピードだけなら通用するとか、こっちはスピードないけどスライダーは使えるなとか、みんな1つぐらいは何かしら“武器”を持っている。それを生かして強い相手と互角に戦える方法はないのか……そこを考えたんですよ」
なかなか頭の中で“形”にならない中で、ふと浮かんだことがあったという。
「総合力なんか求めたら絶望するだけですよ。当時のウチみたいな弱いチームに、総合力を持ったピッチャーなんて、来るわけないですから。もともと総合力を持っているピッチャー、つまりはっきりとした欠点のないピッチャーは先発で5、6イニング投げられるわけです。そして総合力とは、もともとそれがあるピッチャーに、どう上積みしていくかなんです。総合力のないピッチャーに注入するなんて、少なくとも大学の4年間じゃ不可能ですから」
成功体験を積んで帰ってこれる。
ならば、長所の繋ぎ合わせで太刀打ちできないか? 中村監督はこう考えた。
「極端な話、スピードがある子なら全球快速球で1イニングぐらいなんとかならないのか。スライダーが得意なピッチャーなら、全球スライダーで1イニング抑えてくれないか。もしそれが可能なら、彼らは投げるたびに“成功体験”を積んでベンチに帰って来られるわけですよ。
総合力がないピッチャーに、無理して4、5イニング投げさせようとするから、得意じゃないボールも投げなきゃならなくて、そこまでいかないうちにやられてしまう。できないことをやらせて、ピッチャーに恥かかせて、失敗体験を積ませて自信をなくさせるぐらいなら、自信のあるボールだけ投げさせて、やられる前に下ろしてやる。そうやって、守ってやりながら使っていかないと。ウチのピッチャー、東都の1部で投げているような心身の強靭なヤツいませんから」
今でも、この“作戦”は日本文理大野球部のオリジナルとして、多くの試合で使っているという。