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延長10回、ヤクルト12点の惨劇。
広島の最大の問題は「先発陣」だ。
posted2019/04/12 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kyodo News
延長10回、スワローズ12点。
こんなことがプロ野球の世界でも起きるのかと呆然、いや、愕然としてしまった。
4月10日、マツダスタジアム。スワローズの相手は、昨シーズンまでセ・リーグ3連覇中のカープである。
松山のバント処理のミスでピンチが拡大、満塁になってからは名手・菊池のエラーが出てしまう。信じられないことが続き、スタンドからはため息ばかりが漏れる。
時間も夜の10時過ぎ、点差が開いていくと、球場を後にするカープファンをとどめる力は試合に残っていなかった。それでも信仰心篤いファンは声援をおくっていたが、3-12となって二死満塁、ここで田代の走者一掃の三塁打が出たところで、内野自由席の近くに座っていた女性が呟いた。
「終わらん……」
カープにとって、つらい夜になった。
嫌な予感がした、中崎のキャッチボール。
ただし、この夜はカープが凱歌を上げていても不思議はなかった。ブルペン陣が素晴らしい仕事をしていたからだ。
先発の野村が4回で103球を投げて降板すると、後をついだアドゥワが素晴らしい投球を見せ、一岡は気迫でつなぎ、フランスアはスワローズの打者を翻弄した。
そして9回にマウンドに上がったクローザーの中崎は球にキレがあり、雄平を三振、西浦をフライに打ち取ると、売り出し中の村上を三振に切ってとった。
しかも9回裏の攻撃は1番の田中から。サヨナラの舞台は整ったはずが、ヤクルトのマクガフが田中、菊池、野間を圧倒。試合はどちらに転ぶか予測がつかなくなった。
嫌な予感がしたのは、グラウンドの整備中にファウルゾーンで中崎がキャッチボールを始めたことだ。
クローザーの「回またぎ」は危ない……。
しかも、9回の中崎は高い次元での集中力が感じられ、その再現は難しいと思われたからだ。