Jをめぐる冒険BACK NUMBER
FC東京の甘さを「本気」で変える。
殻を破った新主将の10番、東慶悟。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2019/03/29 17:30
FC東京の10番、と言えば梶山陽平のイメージだ。東慶悟はその印象を変えるような活躍を見せられるか。
珍しく長谷川監督に呼び出されて。
さらに、新キャプテンにも任命された。東が長谷川監督から要請されたのは1月、沖縄での1次キャンプ打ち上げが近づいていた日のことだった。
「監督に呼び出されることなんてなかったので、珍しいなって思っていたら、『キャプテンをやってくれないか』って。(前年のキャプテンのチャン)ヒョンスにも話してあると。『慶悟が去年、1年を通してやってくれたことは素晴らしかった。それはキャプテンに値するから』という言葉をいただいて、素直に嬉しかったです。もちろん、キャプテンになったからと言って変わることはないけど、より責任が増したと思います」
クラブと監督から10番とキャプテンの座を与えられ、変化を余儀なくされたわけだが、変化は東自身が望んでいたものでもあった。
大宮アルディージャから2013年にFC東京に加入して以来、ランコ・ポポヴィッチ監督、マッシモ・フィッカデンティ監督、城福浩監督、篠田善之監督と、すべての指揮官から中盤で重用されてきた。
しかし、自身のシーズン記録である大宮時代の8ゴールを超えるどころか、1ゴール、2ゴールに終わるシーズンが何度もあった。いつしか、バランスが取れて、守備で頑張れる選手と見なされるようになった。よく言えば、計算の立つ選手。しかし、試合を決めるような仕事をしていないという側面も否めない。
プレッシャーを克服して成長する。
そんな自分の殻を破るきっかけを、東は求めていたのだ。
「キャプテンってなりたくてもなれるものじゃないし、10番だって誰でも付けられる番号じゃない。だから素直に嬉しかったし、正直、不安もすごくある。でも、不安をなくすためには練習するしかないし、プレッシャーを克服しないと、選手って成長できないと思うから、キャプテンと10番を託してくれたクラブと監督には感謝しています」
変化を求めていたのは、東だけではない。チームもまた、変化を求めていた。
最後にタイトルを獲得したのは'12年1月の天皇杯。それ以降、日本代表選手を何人も抱え、ワールドカップ戦士を送り出しながらもタイトルに手が届かず、いつしか中位が定位置になった。リーグ最高成績も'15年の4位に留まっている。