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風間名古屋の新人・相馬勇紀を見よ。
台頭の秘密は早大での4年間にあり。
text by
森迫雄介Yusuke Morisako
photograph byHaruka Oyama
posted2019/03/26 11:15
165cmの体格ながら、その突破力は迫力十分。相馬勇紀を五輪世代で一度は見てみたい。
「いいとこ取りできたなと」
リーグ戦が再開すると、相馬の得点感覚はさらに研ぎ澄まされていった。ボックス内に果敢に飛び込んでいき、ゴールへ向かっていくプレーを身につけたことでワンタッチゴールが増加。確実にプレーの幅は広がり、前期以上に圧倒的な存在としてピッチに君臨し続けた。
最終的に後期リーグ戦で10試合に出場し6得点を挙げ、シーズン通算では自己最多となる9得点をマーク。新たな武器を手にしたことで殻を破り、大学のラストイヤーで遂に危険な「アタッカー」として覚醒した。
「いいとこ取りができたなと思う」
大学サッカーとJリーグを兼任した時期を改めて振り返ってもらった際、相馬はこう口にした。普段プレーする大学サッカーと比べて、国内最高峰の舞台であるJリーグではプレッシャーの速度と強度が段違いだ。そういったレベルの高い環境に身を置いたことで、判断力が次第に引き上げられていった。
一方、大学では、最後までしっかり走り切り球際を全力で戦うという、サッカー選手として最も大切なことを学べたという。
「プロと大学双方の長所を客観的に知って学ぶことができたから、昨年の成長率は大学4年間の中で一番大きかった」
大学での自主性で得た人間性。
そして大学を経てプロになることのメリットを相馬に問うてみると、こんな言葉が返ってきた。
「人間性という大きなくくりにはなるが、それは大学に入って良かったなと感じるところ」
大学の大きな特徴は、学生が主体となって行動を起こすところにある。
リーグ戦の運営や部の広報活動、練習メニューの作成に敵チームの分析。あらゆる活動に学生が取り組み、仲間たちと話し合いながら多くの決断を下していく。その過程で意見がぶつかり合うことは、決して珍しくない。
かつての相馬も例に漏れず、自分の意見を決して曲げないがために、チームメートとぶつかり合って涙を流すことが多かったという。
かつての自分を「わがままな奴」と評した相馬は、「傾聴力を身につけたことで、他人の意見を聞きながら改めて自分で考えるということができるようになった」と、自身の成長に一定の満足感を見せた。
4年間を通じて遂げた精神的成長もまた、早大で得た貴重な財産だ。