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4階席まで響く憲剛の「受けるな!」
川崎がACLで取り戻した勝ち切り方。
posted2019/03/14 17:00
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
Getty Images
「受けるな!!」
1-0で迎えたアディショナルタイム。ピッチにいる38歳・中村憲剛の強い声が、等々力に響きわたる。味方に対するそのコーチングは4階の記者席にまで届いたほどで、まるで怒号のようだった。この試合のリードは、絶対に守り切らなくてはいけないものだったのだ。
それもそうだろう。
この1週間、川崎フロンターレは公式戦2試合連続で試合終盤の失点で勝ち点を失っていた。1週間前のACL・上海上港戦では、89分に与えたPKによる失点で敗戦。さらに3日前の横浜F・マリノス戦では、ラストプレーとなったCKから痛恨の失点。手中にしていたはずのリーグ戦初勝利が土壇場でこぼれ落ちた瞬間、川崎の選手たちはその場に崩れ落ちている。
だからこそ、この日は何としても勝ち切らなくてはいけなかったのだ。
では、どうやってこの僅差を勝ち切るのか。
憲剛の声に集約された「勝ち切る」。
冒頭の中村のコーチングに集約されていたのは、そこだ。決して受けない。引いて相手の攻撃を受け止めるのではなく、相手に余裕を与えないほど強気でボールを追い続ける。そしてボールを保持すれば、自信を持ってキープして時計の針を進める。中村より18歳年下の田中碧は、この日のゲームの終わらせ方には3日前の反省があったことを口にする。
「(横浜F・マリノス戦では)受け身になってしまった感じがありました。自分たちでもう一回取りに行く姿勢。最後は、相手の出力が出たので、押し込まれる形にはなりましたが、そこで引きこもるというよりは、プレスに行くところは行く。そこは0-0の時と同じことをやっていこうと、グラウンドの中でも話していました」
選手たちは、この1週間の嫌な記憶を払拭するかのように、そしてまるで優勝がかかっていた試合かのように粘り強く、強気に戦い抜いた。無失点で掴み取った待望の勝ち点3に、奈良竜樹も安堵の表情を浮かべた。
「守り切るということを意識すると受け身になってしまう。最後までボールを持って終わらせる。泥臭く勝ち点を取りにいくのがACLでもある。ウチは引いて守ることに慣れているチームではないし、常にボールを持って攻撃させないことは90分意識してやりました。最後まで焦れずにやれたと思います」