ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
リバプールCL制覇へ必須の大黒柱。
ファンダイクという「究極のCB」。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/03/14 12:30
攻撃の起点、セットプレーでのターゲット、対人能力と統率力。ファンダイクは今見ておくべきセンターバックだ。
後方での安心感は大きな武器。
前半の終盤にジョエル・マティップのオウンゴールで同点に追いつかれた後、ペースがバイエルンへと傾きかけたが、ここでも身振り手振りで守備陣を鼓舞。リベリーやセルジュ・ニャブリにサイドはある程度崩されても中央はきっちり締めるという意思統一を徹底させていたのもファンダイクだった。
胸を張って堂々と最終ラインの真ん中に鎮座し、積極的に声を飛ばすファンダイクが醸し出す圧倒的な“安心感”は、今のリバプールにとって大きな武器だ。
キックの質が高いから彼自身が攻撃の起点になれるのもそうだが、それだけでなく「あいつが後ろにいてくれるから」という信頼があればこそ、他の選手たちはチャレンジ精神を持ったパスや突破を選択できるし、チーム全体の攻撃が活性化する。
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ファンダイク抜きで無得点だったファーストレグと、彼が戻ってきて3ゴールを挙げたセカンドレグの違いはまさにそこだったように思える。
ヒーピア、キャラガーの系譜。
思い起こせば、最終ラインに彼のような精神的リーダーがいるときのリバプールは強い。2000-2001シーズンにカップ・トレブル(FAカップ、リーグカップ、UEFAカップ優勝)を達成したジェラール・ウリエ監督の時代には、サミ・ヒーピアがいた。
彼は選手としても人間としてもチームメートの信頼を一身に集める存在で、まさに「大黒柱」という言葉がふさわしい男だった。
2004-05シーズンに「イスタンブールの奇跡」でチャンピオンズリーグ優勝を果たしたラファエル・ベニテスの時代には、ジェイミー・キャラガーがいた。キャプテンだったスティーブン・ジェラードが背中で語るリーダーなら、副キャプテンのキャラガーはとにかく「口を出す」ことでチームの士気を上げる闘将で、チームを引き締める上で重要な存在だった。
そんな彼らと比較される存在となっているファンダイクだが、元イングランド代表DFリオ・ファーディナンドは、「チーム全体に落ち着きを与え、影響力が非常に大きい」ファンダイクが「プレミアリーグが始まってからリバプールで最高のDF」だと語っており、ヒーピアやキャラガーよりも上だと考えている。
そしてヒーピア自身も、ファンダイクは「周囲に自信を与えている」とコメントし、彼は「究極のセンターバックだ」とまで評価している。