ビッグマッチ・インサイドBACK NUMBER
リバプールCL制覇へ必須の大黒柱。
ファンダイクという「究極のCB」。
text by
寺沢薫Kaoru Terasawa
photograph byGetty Images
posted2019/03/14 12:30
攻撃の起点、セットプレーでのターゲット、対人能力と統率力。ファンダイクは今見ておくべきセンターバックだ。
ダメ押し点も絡み、本業も完璧。
そして、ダメ押しゴールとなった84分の3点目も、ファンダイクが起点だった。
FKのリスタートで、左サイドに位置したディボク・オリジの足元にピタリとミドルレンジのパスを供給すると、そのオリジがドリブルでピッチを横断して右のモハメド・サラーにパス。左足アウトサイドのクロスにマネが飛び込んで頭で合わせ、背番号10のこの日2点目でバイエルンの息の根は完全に止まった。
もちろん、“本業”たる守備もオウンゴールによる1失点はあったが、ほぼパーフェクトだった。10分、ロビングボールに抜け出しかけた敵方のエース、ロベルト・レバンドフスキをノーファールでストップしてひと仕事をこなすと、それを皮切りに、この日は空中戦でもデュエルでも負けなし、ドリブルでちぎられることもなかった。
先制直後の28分には、右サイドバックのトレント・アレクサンダー・アーノルドのパスミスからあわやピンチというシーンがあった。ショートカウンターで速くゴールを襲いたいレバンドフスキに対し、ファンダイクは決して飛び込まず、付かず離れずの絶妙な距離感を保ちながら牽制。“仕方なくシュートを撃たせる”守備でことなきを得た。
レバンドフスキと正対する一方で、最終ラインの仲間たちにポジショニングの修正を指示するなど無駄のない対応で、味方のミスをカバーしてボールを取り返すことに成功したのだ。
見逃せないのはリーダーシップ。
ファンダイクは今や世界最高のセンターバックとの呼び声も高く、プレミアリーグでは今シーズンの年間最優秀選手候補とも言われる。1対1に負けない強さ、どんな相手にも制空権を握れる高さ、フィードやビルドアップの巧さという三拍子がそろった選手だが、それだけに留まらない大きな魅力がある。
それは「リーダーシップ」と「統率力」である。
たとえばまだ20歳と若く、元々はMFでサイドバック経験も少ないアレクサンダー・アーノルドとの関係性だ。どうしても90分の中で数回イージーミスが出たり、強力なウイングと相対すると守備で後手に回ることがある。
この日のアーノルドはフランク・リベリー相手によく戦っていたものの、すべてのマッチアップに勝てるわけではなかった。ただ、それでもリバプールが“致命傷”を負わずに済むのは、「後ろにはオレがいる。だから安心しろ」と言わんばかりにファンダイクが目を光らせ、素早くカバーに奔走しているからだ。