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高木美帆「みんなで抜いた」世界新。
小平奈緒、コーチ、強敵への感謝。

posted2019/03/14 08:00

 
高木美帆「みんなで抜いた」世界新。小平奈緒、コーチ、強敵への感謝。<Number Web> photograph by Takao Fujita

帰国後、高木は2月の世界スプリントの500mで得た発見が今回の記録にもつながったとコメントした。

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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Takao Fujita

 晴れやかな笑みが満面に広がっていた。

 取材エリアに姿を現した高木美帆は、待ち受ける報道陣に開口一番「お疲れ様でした」と言うと、思わずゴホゴホゴホ。スケート界で通称「センゴ(千五)咳」と呼ばれる咳をしながら苦笑いを浮かべた。

 力を出し切ることのできたアスリートだけが見せるすがすがしさが漂っていた。実際、フィニッシュ時には、スタートエリアのベンチまでたどり着いた後に横たわってしまうほど、力を出し切っていた。

 3月9、10日の2日間にわたって米ユタ州ソルトレークシティーで行われたスピードスケートW杯ファイナル。高速リンクとして知られる試合会場で、高木美は女子1500mの世界新記録、1分49秒83を叩き出した。

 ヘザー・ベルグスマ(米国)が持っていた従来の記録(1分50秒85)を一気に1秒02秒も縮める圧巻のタイム。世界で初めて1分50秒の壁を打ち破る滑りは、2日間で計6つの世界記録が誕生した今大会でも、歴史に刻まれる特別な快挙として、大きな喝采を浴びた。

 すべての日程が終了した後、リンクにある世界記録ボードに、『Miho Takagi』の名が刻まれた。日本女子の中長距離種目での世界新は初だった。

世界新樹立にあった3つの要因。

 圧巻の世界新記録樹立の主な要因は3つ考えられる。1つは今シーズンのテーマとして取り組んできたスプリント力の向上だ。現在の高木美の500mの自己ベスト37秒22は、女子短距離で日本の2番手、3番手である辻麻希や曽我こなみとほぼ変わらない。辻も曽我もW杯ファイナル進出選手である。

 そしてもう1つは、磨き上げたスプリント力を生かした、300mから700mまでのハイラップである。今までなら抑えめに入っていたこの周回で、今回の高木美は1位タイの26秒9を出した。

「いつもなら1周目でブレーキをかけてしまうところがあるのですが、その殻を破りたいという気持ちで滑りました」

 スピードに乗った滑りで700mから1100mまでのラップは全体でただ1人の27秒台(27秒9)。ラスト1周はさすがに30秒台(30秒1)まで落ちたが、それでも全体の3番目。後半型の選手と比べても失速は最小限に近かった。

 最後の3つ目は、気象やリンクコンディションなどの条件面である。標高1400mのソルトレークシティーは空気抵抗が少なく、記録製造に有利だが、今大会期間中はさらに気象面も後押しになった。2日間とも曇りか雨・雪で、気圧は860hp前後と低かった。

【次ページ】 25日間で11レースに挑んだ布石。

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