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高木美帆「みんなで抜いた」世界新。
小平奈緒、コーチ、強敵への感謝。
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![矢内由美子](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/b/8/90/img_b82db18f8019ada2a276cfa1e1d92edb6985.jpg)
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byTakao Fujita
posted2019/03/14 08:00
![高木美帆「みんなで抜いた」世界新。小平奈緒、コーチ、強敵への感謝。<Number Web> photograph by Takao Fujita](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/f/4/700/img_f4b8f15ec95dec869636e58e51c709be128419.jpg)
帰国後、高木は2月の世界スプリントの500mで得た発見が今回の記録にもつながったとコメントした。
25日間で11レースに挑んだ布石。
快挙には布石もあった。2019年に入ってから高木美は2月7日から3月3日までの25日間で、世界距離別選手権、世界スプリント選手権、世界オールラウンド選手権と、3つの主要大会に出場し、計11レースで勝負に挑んでいる。
カナダ・カルガリーでの世界オールラウンド選手権の直後は疲れがたまっていたが、時差がほぼないソルトレークシティーに入ってからはスタッフの尽力も得てリカバリーに集中し、急速な回復を見せていた。
布石とは、W杯ファイナルの初日のレースだ。小平奈緒と同走になった女子1000mで自己ベストを1秒近く縮める1分11秒71を出し、小平に競り勝って一時首位に立っていたことである。直後にブリタニー・ボウ(米国)に抜かれて2位となったが、高木美はこのレースで手応えをつかんでいた。
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「1000mでは、その先に行く道があると感じました。1周目がもうすこし速かったらなというところです。1500mではこの反省を生かして、どこまでいけるか」
そう言いながら、「きょうは面白かったな」と言葉を弾ませていたのだ。
平昌後は気持ちが上がらなかったが。
決して順風満帆なシーズンではなかった。今シーズンの開幕直前だった昨年10月上旬のこと。平昌五輪で金銀銅メダルを手にするなど、昨シーズンに最高の成果を得たことで、気持ちが上がらない状態に苦しんだ。
きまじめな性分の高木美にとっては、さぞかし居心地の良くない毎日だっただろう。ヨハン・デビットコーチに心境を吐露したこともあったという。
「ヨハンコーチには『そんなものだよ』とは言われるんですけどね。でも、自分としては何か、そうあってはいけないというような先入観がある。それが葛藤になっているという感じですかね」
そんなふうに話していた。