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「東京マラソンでサブスリー」への道。
セルフ・コーチングで行こう!
text by
柳橋閑Kan Yanagibashi
photograph byHiroki Ban
posted2019/03/01 07:00
アマチュアランナーの多くがセルフ・コーチングで頑張っているはず。この試行錯誤が少しでも多くの人に伝われば、と。
日程と練習メニューの融合を図る。
さて、これで必要な練習は明確になった。では、それをどんなタイミングでどう組み合わせていくべきか? 今回は11月中旬から本格的な練習に入ったので、おおよそ以下のような期分けの意識を持つことにした。
(11月)5000m期
練習をするための土台は秋のトレイルシーズンでできあがっていたので、さっそくスピード練習に入った。主に5000mのタイム向上をめざし、目標はトラックの記録会で20分を切ること。週半ばのスピード練習、週末のロング走という基本サイクルも体に叩き込む。
(12月)10km期
次の段階として、10kmのタイムトライアル、ペース走をポイント練習の軸にする。目標は10kmロードレースでの40分台(過去のベストは42分台)。さらに、シーズン1戦目の湘南国際マラソンで現状を確認する。
(1月)20~30km期
年末年始の休みを利用して走り込みの量を増やす。週末のポイント練習は20km、30kmのペース走、峠走を中心に据える。ハーフマラソンのレースに出場し、スピードと持久力のバランスを確認する。
(2月)本番期
レース勘を磨きつつ、これまでのトレーニングの効果を確認するために、フルマラソン2戦に出場。「レースを練習がわりにする」川内優輝方式だ。その合間に、東京マラソンのコースも試走する。
数字はけっして万能ではないが……。
とりあえずこうした大枠だけを決めておき、日々の練習メニューとスケジュールについては、体の調子を見ながらその都度考えていくことにした。以前は教則本に出ているメニュー、スケジュールをそのまま実行していた時期もあった。でも、そのやり方だと自分のためにやっているはずの練習が「ノルマ」に変わってしまうことに気づいたのだ。
雨の日も雪の日も、体が回復に苦しんでいるときも、スケジュール通りにメニューをこなせば、たしかに「やった感」は得られる。ただ、練習が自己目的化してしまい、疲れるばかりで肝心のパフォーマンスは上がらないということもしばしばだ。
そうではなく、各メニューの意味と狙いを自分の頭で理解し、効果を自分の体で感じながら、自分で練習を組み立てる。そして、毎週、毎月、自分の状態を棚卸しして、次のメニューを決めていく。そうやってセルフ・コーチングで練習したほうが積極的になれるし、何より走ることがおもしろくなる。自分で決めたトレーニングで失敗しても、自分が痛い目に合うだけだから気楽でいいし、人のせいにしてネガティブな思考に陥ることもない。
コーチとしての自分が「今日は20km走だ」と言うと、選手としての自分が「風が強いし、脚も重いし、ジョグにしてもらえませんか……」と弱音を吐く。するとコーチが「レースでも風が強い日はあるし、後半、脚が重くなったときのシミュレーションにもなるじゃないか」と説得にかかる。そうした脳内対話を繰り広げた挙げ句、分裂した2つの人格を統合し、シューズを履いて走りに出る。そして走り終えた後は、練習の成果をめぐって再び自問自答する──その一連の流れを繰り返すことによって、ランニングというものをより深く理解できるようになる。
とはいえ、自分の状況を客観的にジャッジするのは難しいものだ。感覚は何よりも大事だが、ときに嘘をつくこともある。だから、電子機器を使って計れるデータはすべて計ることにした。GPSウォッチ、心拍センサー、加速度センサー、体組成計を使って、パフォーマンスと体の状態を数値化し、コーチ代わりになってもらうのだ。数字はけっして万能ではないが、少なくとも嘘はつかない。
そうした客観的な数字と、昔ながらの主観的な練習日誌を組み合わせて記録をつけ、ときおり見返しながら、セルフ・コーチングで練習プランを練っていく。なにせ素人のやることだから、失敗することのほうが多いが、結果が出たときは喜びも倍になる。