甲子園の風BACK NUMBER
筒香やダルの言葉で考える球数制限。
高校野球は誰のためにあるのか。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/02/24 17:00
200球を超えるような起用はさすがに減ったが、それでも投手に巨大な負担がかかっているのは否定しようがない。
分かれ目は、高校野球が誰のためのものか。
つまり、「案ずるより産むが易し」。出産する前は本人も周囲の人も何かと心配することが多いが、終わってみると案外たやすく済んでしまうものであるという諺だ。 出産に限らず、物事は事前にあれこれ思い悩むよりも、実際はそれほど難しくないことも多いので、取り越し苦労をするなという意味だ。
高校野球は「子どもたち」のために在るのか、それとも「大人たち」のために在るのか。それが分かれ目だと思う。
以前から「子どもたち」の側に立った発言をしてきたDeNAの筒香嘉智外野手は、1月に外国特派員協会での記者会見でこう言っている。
「高校野球は『教育の場』とよく言われていますが、子供たちが甲子園でやっているのは『部活動』です。昨年も球数問題が出ていましたが、子供たちのためになっているのかという疑問があります。(中略)大人の都合ではなくて子供たちの将来を考えることが一番大事だと思います」
ダルビッシュは球数制限のメリットを主張。
シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手も、とてもリアルに「球数制限」について考えている1人だ。
「みんなのことを考えて、やって欲しいと思います」
キャンプの真っ最中、ダルビッシュはそう言った。取材したのは「新潟」の英断に「全国」が「待った」をかける前のことだ。彼が言う「みんな」とは子どもたちのことであり、大人たちのことではない。
「球数制限とか連投への制限とかがあったら、怪我を防ぎやすくなるし、もっと試合に出られる選手が増える。そういう風にしたら試合で輝ける選手も増える」
球数制限=「名門校しか勝てなくなる」というようなデメリットをよく聞く。だが、球数制限のメリットを口にする人は少ない。