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<トップランナーの心得>
和田毅「変わらないことの難しさ」
text by

田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byTadashi Shirasawa
posted2017/05/08 08:00

日本復帰した昨季。15勝で最多勝を獲得すると、'17年は開幕戦のマウンドを託され、8回112球、5安打1失点に抑える好投で白星を挙げた。いまだ衰えを見せない左腕の内面に迫る。
和田毅がまだ20代の半ばだった頃。
「地球って、なぜ回るのかなとか考えたりすることありませんか? 自転とか公転とかいう意味合いではなくて」と突然問いかけてきた。まるで哲学者の物言い。不意を食って二の句が継げない筆者を見ながら、若き日の和田はフフフッと笑っていた。
「えー、それ本当に僕でしたか? スミマセン、覚えてないです。そんなことを言っていたなんて、なんかヤな奴ですね(笑)」
いや嫌味どころか、逆に和田の投手として、人間としての凄みを感じた。だから、約10年が経った今でも忘れられないのだ。
疑問を持つから、常に考える。
考えることは努力や成長の第一歩だ。
最近もふとした日常でその顔を覗かせる。インタビューの日、グラウンドの片隅でポートレートの撮影を終えると、和田はカメラマンへ“取材”を始めていた。
「それ、どこのメーカーですか? じつは一眼レフカメラの購入を考えていて。さっき2台を使い分けていたじゃないですか。撮られながら、どう写り方が違うのかな、光の具合かな、そもそも変える理由は何だろう、と気になっていたんです」
写れば何でもいいわけではない。質に拘る。衝動買いも好まない。吟味する。
和田は「思考派」のピッチャーである。
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