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柿谷曜一朗の表情が変わった理由。
ロティーナ流セレッソの大転換。
posted2019/02/22 07:00
text by
小田尚史Hisashi Oda
photograph by
Getty Images
「自分たちのポジションをリスペクトしよう!」
「ポジションは細かく修正しよう!」
「ポゼッションは忍耐強くやり切ろう!」
腕組みをして選手たちの動きを見守るロティーナ監督とは対照的に、ピッチを所狭しと動き回り、身振り手振りも交えて陣頭指揮を執るイバン・ヘッドコーチの声が、グラウンドに響いた。淀みなく進められていく練習メニュー。始動日から叩き込まれたポジショナルサッカーの概念に、トレーニングを終えた選手たちは口々に「頭が疲れた」と感想を述べた。
遡ること1カ月。セレッソ大阪は激動のオフを過ごした。就任初年度に2冠獲得という華々しい結果を残した尹晶煥監督との契約を満了。そこへ日本代表クラスの主力選手たちの移籍も重なり、チームの色は大きく変わった。
新しいチームに来た感覚。
「新しいチームに来た、とまでは言い過ぎかも知れないけど、感覚的にはそれに近い」(水沼宏太)
サッカーのスタイルも変わった。堅守をベースに攻守の切り替えを重視、奪ったボールは手数をかけずに前へ運ぶことを目指していた前監督に対し、新監督はビルドアップを重視。ボールをつなぎ、動かしながら相手の穴を突くことを求めている。
その前提にあるのが、ポジショニング。相手を見て、意図的に優位なポジションを取り、数的優位や質的優位を作りながらゴールに迫る。
始動から舞洲で、タイキャンプでも連日、戦術の浸透に時間を割いた。宮崎での2次キャンプでは実戦を重ね、都倉賢が「トライ&エラー」と語るところの成果と課題があぶり出された。システムや選手構成は試合によって変わり、ロティーナ監督は自らの持ち駒の特性を見極めていた。
宮崎キャンプ最終日となる2月12日に行われたFC今治とのトレーニングマッチでのこと。昨季までロティーナ監督が率いた東京ヴェルディに在籍し、今季から今治に加入した橋本英郎がピッチに立っていた。橋本は円熟味あるプレーで中盤の潤滑油となり、今治の先制点にも絡んでいた。