ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日本を飛び越えて米韓2国で話題。
なぜ国内のゴルフ動画は目立たない?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2019/02/24 09:00
理論が洗練されてきた現代ゴルフにおいて、チェ・ホソンほど個性的なスイングはそうお目にかかれない。
タイガーやマキロイが言及。
米ツアーへのスポット出場が決まると、騒動はさらに大きくなった。メディアの質問にタイガー・ウッズは「すごく目をひくよね。見ているだけで腰が痛くなる」と反応し、「理にかなった動きだ」とうなずくトッププロも。一方でロリー・マキロイが、大会の貴重な選手の出場枠のひとつを、話題性だけで使うべきかと疑問視したこともあった。
ペブルビーチの大会はプロとアマチュア選手が一緒に回る形式を採用している。NFLのスター、アーロン・ロジャースが同組でのプレーを、これまたSNSで熱望した。願い叶って、コースで初対面の際には「アニョハセヨ!」。覚えたての韓国語であいさつしてきた。結果は予選落ちだったが、韓国のベテランはすっかり人気者になって米国を後にしたのだった。
6年も日本でプレーしていたのに。
前置きが長くなったが、今回の本題はここから。
今回、発端になった動画は実は日本での試合のものではない。チェが一時帰国して出場した韓国ツアーでの映像だった。彼は直近6年も日本を主戦場としながら、である。
少なくともあのスイングは2017年頃にはすでに披露されていたのだが。追随する動画はのちにアジアの試合から多く発信され、米ツアー登場後はその映像で溢れかえった。
なぜ、日本ツアーは後れを取ったのか。ここには、日本ゴルフの構造的な問題点、いわゆる“放映権”の話が関わっている。
海外ツアーや他競技では、試合のテレビ中継映像や動画を管理する権限を統括団体や連盟、あるいはチームが保持して放送局側に売ることで利益を得るが、日本のツアーは各大会の主催者がこれを握ってきた。大会はスポンサー企業にとって、社の広報活動の一環であり、多くの試合が費用を負担してテレビ局側に“放送してもらう”という形態が成り立ってきた。
そのため、試合中のプレー映像使用の権利はテレビ局が管理する。日本の場合は、ツアーの裁量で動画をプロモーション活動に役立てることができない。例えば、海外ツアーではウッズがスーパーショットを見せたその数分後にはSNSでそのシーンが拡散される。日本ではそうはいかないのが現状だ。