ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日本を飛び越えて米韓2国で話題。
なぜ国内のゴルフ動画は目立たない?
posted2019/02/24 09:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
とっさのことで、2カ国語がミックスされてしまったらしい。
2月、米国西海岸での目くるめく日々の一幕。チェ・ホソン(崔虎星)は、現地で受けた歓迎に応えようと感謝の思いを口にした。
「チェさん、『サンキュー ベリー ます!』って言っちゃって……」
夫人のファン・ジンアさんが笑いながら明かす。“Thank you very much.”のはずが、最後に「ありがとうございます」の語尾が出てしまった。
チェは韓国から日本ツアーに主戦場を移してから今年で7シーズン目になる。これまでに2勝を挙げたが、彼がPGAツアーの大会から思いもよらぬ参戦の誘いを受けたのが年明け早々のことだった。
独特のスイングがSNSでゴルフ界で爆発的に広がり、フィル・ミケルソンが優勝した2月のAT&Tペブルビーチナショナルプロアマに推薦出場する運びとなった。
彼にとって今回がなにせ人生で初の渡米。大会前にロサンゼルスにつくなり、家族でユニバーサルスタジオを訪れるなど、一世一代とさえいえる機会だった。
話題の発端は、ツイッター。
クラブを振り下ろし、インパクト付近で体の回転に合わせて右足が高く舞い上がる。打った後だというのに、ボールに念を込めるように上半身をしならせ、足元はティエリアを右往左往。25歳でゴルフを始め独学で培ったそのスイングは、見る人を思わず笑わせる。
昨年春、魚を釣り上げるような動きから取った“フィッシャーマンズスイング”の異名が世界で注目された。
きっかけのひとつになったのが、世界ランク4位のジャスティン・トーマスがツイッターで、チェのスイング動画を目にし「きょう、練習場でやってみようかなぁ」と拡散したことだった。
26万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーの力は大きく、その動きへの賛否が飛び交った。一般ゴルファーのSNSの間では、彼を真似するショートムービーがどこからともなくアップされ、彼を「PGAツアーに出そう!」という署名運動までネット上で展開された。