ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
日本を飛び越えて米韓2国で話題。
なぜ国内のゴルフ動画は目立たない?
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2019/02/24 09:00
理論が洗練されてきた現代ゴルフにおいて、チェ・ホソンほど個性的なスイングはそうお目にかかれない。
放送局ごとの“縦割り”が壁。
確かに大会や放送局がそれぞれのアカウントで、プレー映像を配信するケースも見受けられる。実際にチェの動画もある。しかしテレビ局側が非協力的であるとは言わないが、放送局は複数あるため、一貫性のある広報展開が極めて難しい。
それぞれの局の裁量による“縦割り”の現状では、自分たちが中継する大会にのみ注力され、毎週の試合を楽しみにするゴルフファンが「第一義的に集まる場所」が存在しない。
日本女子プロゴルフ協会(以下LPGA)は、テレビ各局とすったもんだの末、この放映権(施設管理権とプレーヤーの肖像権を根拠とする)を協会に帰属させる動きを進めている。水面下で各大会の主催者周辺が騒がしくなったのは一昨年の夏場。LPGAがインターネット中継を柱として映像の一括管理を主張し、大会主催者の一部が反発した。
昨年末に開催中止を申し出ていた3つの大会が、今年に入って“継続”する意向を示すなど、LPGAは問題の終息を強調しているが、局側の不満はくすぶったまま。円満解決まではまだ時間を要す。
ゴルフファンの利便性は置き去り。
そもそもテレビ局にしてみれば、見方によっては日本ツアーのゴルフ中継は大変おいしい“事業”である。スポンサーからお金をもらって放送するため、多くのケースで視聴率が悪くても損をしない仕組みだからだ。
日本の場合、各テレビ局がコンテンツ事業として、創成期のツアーを支えてきたのは事実である。ただし、そこから数十年が経過し、メディアが多様化して電波とネットを複合的に使う戦略が世界で主流になったのも事実だ。「創った人」と、あるいはそれを「ステレオタイプに受け継ぐ人」の価値は違う。
LPGAを巡る放映権問題は今回、ファンを置き去りにしたまま、各メディアの思惑が交錯して騒動化した。ユーザーにしてみれば、おもしろいコンテンツであれば視聴形態は問われないはずなのだが……。