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福永祐一が語った自らのダービー史。
積み重ねた挫折、父と周囲への感謝。
text by
片山良三Ryozo Katayama
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/02/09 08:00
ワグネリアンで念願のダービー制覇を果たした福永祐一。
それでもダービーはチャンス。
しかし僕が見込んでいたほど、ワグネリアンは抜けた存在ではなかった(結果は7着)。過信を大いに反省しました。ダービー前、友道(康夫)厩舎のスタッフから「しっかり攻めた騎乗をしてください」とオーダーが入ったのも当然のことでしょう。
ただ、皐月賞で敗れても、ワグネリアンはダービーを勝つチャンスがある馬だという認識は変わりませんでした。ただし、僕がうまくレースを運べば、の条件付き。枠が決まる前は、内枠を引き当ててインで上手に脚をため、直線で中から割って出てくるイメージをスタッフとも共有していました。ところが、当たった枠が大外(18頭中の17番)だった。
コースの違いや馬場状態や気候など様々な条件にもよりますが、どの枠に入るかで勝利への難易度が変動します。ダービーの東京2400mという条件においては、感覚的に外枠はかなり不利ですし、データにもそう出ています。
新しいプランはスタッフたちとのディスカッションで立て直し、共有できていました。外枠からスタートしたなりで進めると、もともとスタートが速い馬ではないので、中団から後方のポジションになって末脚勝負になる公算が高かった。
出走メンバーからして、前半のペースが速くなるとも考えられない。勝ち切るためにはある程度いいポジションを取りに行って、そこで折り合いをつけることが必須条件となりました。
スタートに全神経を集中。
だから、スタートに全神経を集中させたんです。馬もよく集中していました。難しいのは折り合い。そこが一番のポイントでしたが、向こう正面でリラックスさせることができました。
ゲートに入る直前は、いい天気だなあ、最高だなあって。こんなにお客さんがいて、こんなに状態のいい馬に乗れて、本当に幸せだなあって思いながらゲートインしたのも初めての感覚でした。今振り返っても最高に集中できていましたね、スタートからゴールまで。
「ダービー勝ったから(騎手を続けるのは)もうええやろ」って、冗談めかして言われることがよくあります。悪い気持ちはしなくて、心配してくれてる人はそうなのかなって思っています。父親のこともありますからね。藤原(英昭調教師)さんは何回もそう言ってくるんです。