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福永祐一が語った自らのダービー史。
積み重ねた挫折、父と周囲への感謝。
 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/02/09 08:00

福永祐一が語った自らのダービー史。積み重ねた挫折、父と周囲への感謝。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ワグネリアンで念願のダービー制覇を果たした福永祐一。

落馬による負傷という試練。

 ダービー馬ワグネリアンは、惜しくも天皇賞を回避した。神戸新聞杯の勝利後疲労が抜けず、友道師は「先のある馬だし、今は無理をする時期ではない」と判断。短期放牧を経て、有馬記念の出走を目指すという。

 福永にもこの秋、大きな試練が訪れていた。9月16日、落馬による頭蓋骨骨折と気脳症というケガ。振り返れば、デビュー4年目に左腎臓を摘出し、最も速いペースで勝ちまくった'15年には、右鎖骨など複数の骨折を負って残り2カ月を棒に振った。今回は幸い2週間の休業で復帰できたが、母・裕美子さんの心配が尽きることはない。

 それはもうね、ずっとですよね。ケガしたからとかではなくて、騎手を続けている限りずっとそうなんで。母親もそうですし、妻も娘も同じ気持ちでしょう。

 今回の件に関しては、「頭蓋骨骨折」と発表したことを反省しています。正確には、側頭骨骨折なんですね。「頭蓋骨骨折」って、字面も語感も、何かすごく一大事な感じがするじゃないですか。

 ニュースで大きく扱われて、それこそ父親のこともあったし、友人たちがみんな心配して連絡をくれたんですけど、「全然大丈夫なんで」って何回も説明するのが大変でした(笑)。大勢の方々にご心配をお掛けして本当に申し訳ない限りですが、僕はもう大丈夫です。

 でも、ケガだけは気をつけてとか、ケガはしたくない、みたいなことを言うと、逆に引き寄せちゃうこともあるのかなって思うようになって。これからはあまり口に出さないようにしようと決めました。あとは自分が「もういい」と思うまで、騎手生活をまっとうしたいですね。

フランキーを観察し続けると。

 '10年春から動作解析の専門家である小野雄次氏のコーチングを受けることで、福永は騎乗技術を格段に向上させ、大きな飛躍を遂げた。トップクラスの実績を積み上げた騎手が、技術の基盤をゼロから作り直す取り組みをしたこと自体が異例中の異例だが、悲願のダービータイトルを獲得したことで、その自信をより深めている。そして、さらなる向上も忘れない。

 小野メソッドは今も進行中です。基礎技術の修得はほぼ終わりましたが、この後は自分のオリジナルを追求するのが課題です。たとえば、フランキー(ランフランコ・デットーリ)の騎乗を観察し続けていると、バージョンアップを繰り返しているのがわかります。

 だから、あの年齢(47歳)で世界のトップに居続けている。海外トップクラスの騎手が何をしているか、何がトレンドなのか、それを取り入れながら自分の技術として身につけられるかが今の取り組み。ホント、面白いですよ。

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