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ファンの「期待外れ」を覆すため、
整い始めたダルビッシュの体と心。
posted2019/02/03 11:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
1月18日、金曜日の夜。シカゴ市内の一流ホテルでカブスのコンベンション(日本風に言えばファン感謝祭)が行われた。
外は氷点下。中は暖房が利きすぎて乾燥しているぐらいだ。そんな中で旧知の地元記者とお互いに年始の挨拶をする。彼は続けてこう尋ねてきた。
「……で、今日は何しに来たんだい?」
参加選手のリストに「Yu Darvish」があるから、とは言わなかった。「ファン感」参加は選手にとっての義務ではないし、過去にリストに名前があっても参加しなかった主力選手もいるからだ。最適な答えは「Just in case.」、つまり「念のため」だ。
そもそも、日本人選手がいてもいなくても取材している。そんな日本人記者に「何しに来たの?」と訊くということは「皮肉」である。長年の付き合いだ。そういう人だと知っているから怒らず、「How about you(あんたは)?」と返す。
それも彼が躍起になって追いかけるカブスがこのオフ、大きな補強をしなかったことに対する「皮肉」である。
ダルビッシュの来場に驚いた。
ダルビッシュ有が姿を現したのはそんな時だった。ネクタイこそしてないが、パリッとしたスーツを着ている。「皮肉屋」が思わず「Oh? He really is here.(おっ? 彼、本当にいるじゃないか)」とつぶやく。
そう、私を含めた地元メディアの何人かは、驚いたのだ。
「家族の用事があったんで来ない予定だったんですけど、来た方がいいかなと思って」
ダルビッシュはそう言った。他の選手同様、シーズン中とは違って穏やかな表情だった。自宅のあるテキサス州ダラスから「日帰り」で来たという。
出席するのも欠席するのも自由の“ファン感”はしかし、選手たちのファンに対するスタンスを少し明確にする。言わば「べつに来なくても怒られはしないけど、なるべくなら来た方がいい」イベントである。