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ファンの「期待外れ」を覆すため、
整い始めたダルビッシュの体と心。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2019/02/03 11:30
ダルビッシュはカブスのコンベンションで地元の子どもたちと交流し、朗らかな表情を見せた。
結婚式で得た、ある感覚。
1月にセドナで行われた聖子さんとの結婚式。KIDさんの死とは直接、関係ないというが、今になって振り返ってみると違う感覚もあるという。
「皆を勇気づけるとかそういうつもりはなかったけど、子供たちもいっぱい来るから、彼らにもスポットライトが当たるような、参加してくれた1人ひとりが全員楽しめるような、誰もが主役になれるような結婚式がしたかった。
それで最終的に皆が楽しんでくれたようなのでやって良かったなと。僕自身、すごく落ち込んでいる時期だったっていうのもあるし、そういう意味でも良かったと、あとになって感じました」
そこでようやく、気がつく。
怪我にしろ、成績にしろ、いつまでも過去にこだわっているのは「周り」であり、ダルビッシュ本人はすでに前を向き、かなりの距離を進んでいることに。
どうせ進むならポジティブに。
たとえばこのオフのこと。「プロ・ツイッタラー」を自称するダルビッシュに、応援しているような感じでアプローチしつつも「ツイッターするのは成績を残してからだろう?」というような曖昧なメッセージが届いた。それに対して本人はきっぱり、こうリプライしている。
「結果残しとけば叩かれないんだから今は黙っとけみたいなことを言っている人に教えてあげる。結果出した年でも変わらず同じようなリプが来ることを。」(原文ママ)
その人に見えている風景や住んでいる世界が違えば、考え方も違う。そして時間の過ごし方そのものも、違う。
前進している者と、立ち止まっている者。両者が相容れないのは当然だ。
ダルビッシュはもちろん、前者だ。
去年ほど心身ともに傷つき、自分に対する期待と失望のギャップが大きかったシーズンは、今までそうなかっただろう。時には立ち止まって考えることもあっただろうが、いつまでも、うつむいているわけにはいかない。
顔を上げ、前を向いて、一歩一歩、進んでいくしかない。そしてどうせ進んでいくのなら、悲壮感を持ってやるより自分らしくポジティブに、楽しくやっていく――。
このオフ、彼のツイッターに触れた人々の多くは、そういう感覚を共有しているのではないか。