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大坂なおみとクビトバの人気者対決。
勝者は「次の女王」に大きく近づく。
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byAFLO
posted2019/01/25 17:00
決勝へ向けた練習でも、大坂なおみの表情はリラックスしていた。クビトバとの決勝が楽しみだ。
「私の時間はゆっくり進んでいるのね」
グランドスラムで初優勝から2大会連続して決勝に進んだのは、'01年の全豪と全仏を制したジェニファー・カプリアティ以来で、その前年にも当時20歳のビーナス・ウィリアムズがウィンブルドンと全米を連覇している。
'97年にはマルチナ・ヒンギスが16歳の若さで全豪優勝に続いて全仏で準優勝していることに今さらながら驚かされるが、かつてはこうしてスターダムへ一気に駆け上がる女の子たちがいた。大坂の成功のスピードは、あの時代の衝撃と似たものがある。
しかし、大坂自身は私たちの驚きに首を傾げる。
「私にしてみれば、けっこう時間がかかったなって感じだけど。グランドスラムの2週目にいきたいって願っていたのに、ずっとダメだった。多分、私の時間はあなたたちよりゆっくり進んでるのね」
確かに1年前まで丸2年間、グランドスラムの3回戦の壁に苦しんでいた。昨年のこの全豪オープンでやっと3回戦を突破したが、4回戦で世界1位のハレプに敗れた。
それから2カ月足らずで、グランドスラムに次ぐ格の『プレミア・マンダトリー』に属するインディアンウェルズのBNPパリバ・オープンでツアー初優勝し、全米オープン制覇。さらに今こうして全豪オープンの決勝に進み、1年前は70位だったランキングはこの時点で2位が確定している。
決勝に勝てば、なんと1位である。相手はチェコのペトラ・クビトバ。過去にウィンブルドンを2度制した28歳との初対戦は、実に興味をそそる。
クビトバも「未来の女王」と呼ばれた。
クビトバは、やはり有力な女王候補だった。1度目のウィンブルドン優勝は2011年、21歳のときだった。その大会でのセリーナは、ケガと病で丸1年のブランクを経て復帰したばかり。もうセリーナの時代は終わったとも囁かれる中で、聖地の頂点へ駆け上がったのがクビトバだった。
183cmの長身に左利きという絶対的な武器と、パワフルで隙のない好バランスのプレースタイル。元女王のマルチナ・ナブラチロワも「間違いなく未来の女王」と太鼓判を押した。しかし、レジェンドたちやマスコミの読みははずれ、最高ランクは2位。3年後に再びウィンブルドンを制したが、その後はグランドスラムのベスト8が最高だった。