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大坂なおみとクビトバの人気者対決。
勝者は「次の女王」に大きく近づく。
posted2019/01/25 17:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
AFLO
少なくともこの10年、女子テニスの関心事はこの一点に尽きるだろう。
ポスト・セリーナは誰なのか――。
今は世界ランク16位だが、そんなこととは関係なく“絶対女王”の地位を築いたセリーナ・ウィリアムズ。ライバル視されていたマリア・シャラポワやビクトリア・アザレンカが落ちぶれると、その強さと存在感は圧倒的となり、セリーナひとり勝ちの状態は女子テニス界の懸念にもつながっていたのだ。
新たなスターが現れなければ、女子テニス界は魅力を失ってしまう。しかし、浮かんでは消え、消えては浮かぶ候補者たち。
たとえば、2013年の全豪オープンの準々決勝でセリーナを破ったスローン・スティーブンス(当時19歳)は特にアメリカでセリーナ2世と騒がれた。2016年全仏オープンの決勝でセリーナを破ってグランドスラム初優勝を果たしたガルビネ・ムグルサ(当時22歳)には、新ライバルとして世界が期待を寄せた。
最近では、昨年の全仏オープンでノーシードからチャンピオンに輝いたエレナ・オスタペンコ(当時20歳)も衝撃的ではあった。しかし彼女たちに欠けていたのは、安定感と迫力だった。
昨年の全仏オープンを制したシモナ・ハレプはその前の全豪でも準優勝するなどある程度安定した実績を作り、一昨年の10月から現在に至るまで、カロライン・ウォズニアッキに4週間だけ譲り渡した以外は女王の座を守っている。
しかし、対セリーナの直接対決で1勝8敗と大きく負け越しているハレプはまだ“真の女王”と認められていないムードだ。こうして誰も特定されないまま、年月とともに焦りと失望だけが募っていった。
大坂はあらゆる条件が新女王にフィット。
そこに現れた大坂なおみが今、グランドスラム2大会連続優勝に片手をかけている。彼女こそ、混沌とした女子テニス界のモヤモヤを吹き消すセリーナの後継者――予感が確信へ変化する過程を今誰もが楽しんでいる。
セリーナをすでに2度倒し、一度も負けていない大坂は、難題をすでにクリア。21歳の若さ、ダイナミックなテニス、ユニークなバックボーン、愛されるキャラクター……申し分ない次世代の女王の姿なのだ。