テニスPRESSBACK NUMBER

大坂なおみの体型が明白に変わった。
女子テニスに渦巻くフィジカル革命。 

text by

山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

PROFILE

photograph byAFLO

posted2019/01/22 15:10

大坂なおみの体型が明白に変わった。女子テニスに渦巻くフィジカル革命。<Number Web> photograph by AFLO

4回戦も窮地を凌いで勝利した大坂なおみ。メンタルの成長とともに、コンディションの良さも見逃せない。

減量し過ぎると威力を失うが。

 4回戦のあと記者会見に呼ばれたサーシャによると、「彼女の体型は今の時点で可能な限りベストの状態だ」とのこと。敏捷性やスタミナは増したが、本来の持ち味であるパワーは失われていない。今のところ大坂の肉体改造は狙い通りだ。

 減量も度が過ぎればショットの威力を失わせるというデメリットを招く。

 たとえば昨年、その減量ぶりが話題になったウクライナのエリナ・スビトリーナには、否定的な意見も渦巻いた。しかし、「人それぞれに意見があるけど、私は自分の取り組んだことが間違っていないと思う。オンコートもオフコートの生活も充実している」と断言し、グランドスラムは昨年も最高でベスト8止まりだったもののWTAファイナルズでビッグタイトルをつかんだ。

「以前のテニスでは限界を感じた。何かを変えなければツアーのレベルはあまりにも高いから、食べ物やフィットネスや睡眠時間というような細かなことにも気を遣うことが重要なの。小さなことが大きな違いを生み出すから」

 このスビトリーナが大坂の準々決勝の相手である。今大会を見る限り、“劇的ビフォー&アフター”からやや体型を戻したようにも見えるが、自分の求めるテニスにもっともふさわしい体の状態を常に模索する姿がうかがえる。

伊達公子が話していたこと。

 かつて、こんなことを言った男子選手がいた。

「女子のトップ100のうち80%は『太った怠け者のブタ』だ。男女同額賞金に値しない」と。

 のちの1996年にウィンブルドン男子シングルスを制するオランダのリカルト・クライチェクだが、その発言は大問題となり、当時、トップ10入りを目前にしていた20歳の生意気盛りの若者はマスコミの批判にさらされた。

 しかし、実のところ「表現はひどいが、男子と比べればそう言われてもしかたないかも」という声も陰でちらほらとはあったのだ。

 今はこうした発言に対して世間がより厳しくなったことを差し引いても、女子選手をそんな目で見る者はほとんどいない。女子テニスは劇的に変わった。'90年代と2010年代の両方の時代をプレーヤーとして知り尽くす伊達公子さんは、以前こんな話をしていた。

「今の女子選手はフィジカルに関して常にアンテナを張って情報を入れようとしている。その姿勢や取り組み方は、'90年代と全然違います。昔は会場の中にジムもありませんでした。今はそれを多くの選手が利用しますし、ホテルのジムも朝から選手であふれています。これだけ過酷なツアーの中では、目的を持って体を強化していかないとついていけないし、ましてや人より上にいくことはできません。フィジカルに対する意識の高い選手ほど強いし、強くなると思います」

【次ページ】 チームを形成するのが主流。

BACK 1 2 3 NEXT
大坂なおみ
サーシャ・バイン
セリーナ・ウィリアムズ
伊達公子

テニスの前後の記事

ページトップ