松岡修造のパラリンピック一直線!BACK NUMBER
修造、驚愕! パラカヌー瀬立モニカは
肩甲骨と頭の位置でバランスをとる。
text by
松岡修造Shuzo Matsuoka
photograph byYuki Suenaga
posted2019/01/15 07:00
このキラキラと輝く水面は、中学時代から通う江東区の練習場。インタビュー時に、カヌーを漕いでみせてくれた瀬立モニカ。
「こうやって死んでいくんだな、って」
松岡さんはかつて体験したカヌーに若干のトラウマがあるようで、カヌーが上手く乗れるようになっていく過程についても興味津々。矢継ぎ早の質問に、モニカさんは丁寧に答えていく。
松岡「何がコツなんですか。これができればカヌーに乗れるというものがあったら、ぜひ教えて下さい」
瀬立「やっていくうちに、どこまで行ったら落ちちゃうかというのがわかってくるんです。あとは、持っているパドルの腹を水面につけるとバランスが取りやすくなる。それを覚えると上達が早いです」
松岡「綱渡りでもよく棒を持ちますけど、あんな感覚なのかな」
瀬立「そう! だからパドルを扱うのが上手くなると、もう一方の空いた手で水を飲むことだってできるんです。4月に入部して、8月ぐらいになるともうチンもしなくなって、どんどん自分に自信もついてくるんですね。そうすると、今度は自然な流れとしてスピードを求めていく」
松岡「大会にも出たんですか。その江東区が力を入れて強化していた、東京国体に」
瀬立「私が高校1年の夏に東京国体が開催される予定だったんです。でも、高校に入学して2カ月目の2013年6月に、車椅子生活となるケガをしたので、国体には出られませんでした」
松岡「確か、体育の授業中だったんですよね」
瀬立「はい。倒立前転ってわかりますか。まず逆立ちをして、そこからくるっと前に回るんですけど、倒立の姿勢でそのまま垂直につぶれてしまって。なぜかその時だけうまくいかなくて、失敗しちゃったんです」
松岡「運動神経が良いはずだし、カヌーでバランス能力だって鍛えている。それでも防げなかった」
瀬立「自分でも理由はわからないんですけど、過信したところがあったのかな……。ちょうど授業が終わりかけで、注意力が散漫になる時間帯でもあったんですね。それで最後に決めてやろうと欲を出して。見ていた友だちによると、前にも後ろにも行けずにそのままつぶれたみたいです」
松岡「その時、意識はあったんですか」
瀬立「ありました。つぶれた時に息ができなくなって、ぜんぜん吸えない。人間ってこうやって死んでいくんだな、って。わりと冷静に思ってました」