“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
瀬戸内と尚志の独特さって何だ?
選手権準決勝でユース教授が注目。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakhito Ando
posted2019/01/11 07:00
尚志に所属する世代別代表FWの染野。東北勢対決で青森山田を撃破できるか。
瀬戸内の独特なチーム運営術。
瀬戸内はキャプテンと副キャプテン、そして安藤正晴監督が3人で、毎日の昼休憩の時に話し合いをしているのだという。そこで選手達の意見、安藤監督をはじめとしたスタッフ陣の意見を交換し、時には議論までして、日々の練習や試合に反映させている。
より具体的な打ち合わせの時は、各種の映像を見せる時もあり、より個人的な内容の時は選手と指導陣が膝を突き合わせて語り合うこともあるのだという。
そうした交流の場で、選手達がサッカーの戦術変更について意見を出してみたところ、安藤監督も快諾。さらに参考資料として4-3-3のサッカーを取り入れているリバプールの映像までも見せて、イメージを具体的に膨らませたそうだ。そこから瀬戸内の4-3-3が始まった。
「リバプールはしっかりと中にはめていく守備をして、奪ったら素早くショートカウンターを仕掛ける。僕たちの場合、普段の練習から狭い中でワンタッチ、ツータッチ、ダイレクトのパス練習をやって、素早くボールを捌くことを意識しました。
僕と吉田寛太の2インサイドハーフが起点となって、受ける時は受けて、抜ける時は抜けることが大事。この2人が起点となれば良い形になる」(佐々木)
佐々木と吉田の2人がナビ・ケイタとジェイムズ・ミルナー役となり、左ウィングに178cmのスピードアタッカー・川岸怜央、右ウィングにシュートセンスに長けた加藤竜大を配置し、リヴァプールの象徴とも言えるサディオ・マネとモハメド・サラーの両ウィングをイメージしたのだ。
「どんな結果が出てもぶれない」決意。
もちろん真似をしただけでは機能はしない。
選手達は同時に自分達の意識改革も行った。
「僕らは安部さんたちの『最強世代』を見て来て、いざ自分達の代になったら『最弱世代』と言われて……。自分達でも技術面だけでなくメンタル面も弱いと感じました。インターハイで初戦敗退(阪南大高に1-3)をしたことをきっかけに、チーム全体で意識を変えた。
その1つとして、一度やると決めたパスサッカーを、どんな結果が出てもぶれること無く続けていくことをみんなで話し合いました。練習でも常に意識を高くして、ポジショニングやパスの質など細かい所までこだわってやり続けた」
その結果、ずっと跳ね返され続けていた選手権予選の壁を初めて突き破り、初めての選手権で3勝し、埼玉スタジアムの舞台までたどり着いた。
それは決して勢いだけではなく、実力で勝ち取ったものだ。