野球善哉BACK NUMBER
新潟の球数制限がもたらす次の問題。
トーナメント戦で投手育成は可能か。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2019/01/09 07:00
甲子園で勝ち上がったチームのエースの球数を数えるのはもはや恒例になった。改革の機運は高まっている。
「センバツが日本の野球を小さく」
さらにセンバツ出場校を選考する秋季大会は、夏の甲子園決勝戦が終わってからあっという間に始まる。数週間でチームを作り、トーナメントの一発勝負が始まるのだ。突貫工事でチームを形にしなければいけない厳しい現実がある。
慶応高校の元監督で、現在は慶応大コーチの上田誠氏がかつて、こんなことを話していた。
「センバツのシステム自体が日本の野球を小さくしている気がします。神奈川県だと7月25、26日まで夏の県大会があって、甲子園出場を逃したチームはそこから数日間休みを取って8月の頭から新チームに移行します。そして8月23日ごろには秋の公式戦が始まる。
その間が3週間しかなく、チームづくりはミスが少ないことに重きをおかざるを得ない。そして秋の県大会、関東大会、さらにセンバツと勝ち進めば、たくさんの選手を試す機会がないままのチーム作りになってしまう」
日本高野連は、球数制限導入を反対する意見として「部員が少ないチームに不平等だ」と口にするが、では、現時点で平等なのだろうか。9人しか部員がいないチームが、トーナメント制の中でどう出場機会を増やすのか。9人の部員を回して、もう1人の投手を作る。そうした機会すら作っていないのが現状だろう。
一方、優勝するようなチームは、力の差があれば公式戦であっても2番手が登板する機会がある。大量点差がつけば登板の機会が訪れるし、地区大会の出場枠が3つあれば、準決勝を勝ち上がった時点で、「負けてもいい試合」ができる。すでに平等じゃないのだ。
リーグ戦ならば出場機会は増える。
理想論としては、長期のリーグ戦を公式戦という形で実施すべきだろう。
開催時期としては、9月から5月までが理想だ。
そうなると、センバツ大会の出場校をどう選考するかが問題になるが、個人的には、高校生の育成においてセンバツ大会はかなり微妙な存在だと考えている。
長期のリーグ戦を実施して、選手に多くの公式戦を経験させる。そうすることで、たくさんの投手が登板する機会が生まれるし、野手も多くがグラウンドに立つ機会が生まれる。
センバツに合わせるために、どれだけ高校野球の日程が窮屈になっているか。日本高野連は再考すべきではないか。
新チームが立ち上げられて即、負けられない戦いが始まるのではなくて、多くの試す機会が得られる。それも練習試合ではない形で実施されることで、経験値は高まっていくのだ。