野球善哉BACK NUMBER
新潟の球数制限がもたらす次の問題。
トーナメント戦で投手育成は可能か。
posted2019/01/09 07:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
平成の終焉を控えての強烈なメッセージだった。
新潟県高校野球連盟が、今年春の県大会からの球数制限導入を決めた。このニュースに驚くとともに、時代が大きく動き出したことを感じずにはいられなかった。
昨今、野球少年の肩や肘などをめぐる健康の問題は、国内外を問わず懸案事項となっていた。若くして肘にメスを入れる選手が後を絶たず、たとえば米国では医師をはじめとした専門家の意見をもとに、MLBと米国野球協会が球数制限を推奨するガイドライン(ピッチスマート)を策定するなど、日本よりもはるかに先んじて動き出していた。
そんななかでの、新潟県高野連の発表。毎年開催される「新潟サミット」の中で行われたが、ここ数年の新潟県の取り組みは、実は野球界の中ではよく知られた存在だった。
筆者は新潟サミット自体の取材をしたことはないものの、2016年度の野球指導者講習会に参加した際に、「新潟メソッド」なる存在を知った。新潟では、県内の野球競技9団体で構成される「新潟県青少年野球団体協議会」が独自の取り組みを行っている。そのうちの1つが、現場と医療が一体となった健康面への対策だった。
新潟高野連の志を評価すべき。
この野球指導者講習会で講師役を務めた山本智章氏(新潟県少年硬式野球連盟 医療顧問)はこんな熱いメッセージを受講生たちに送っている。
「競技力向上と障害予防は、これは別々のものではなくて、一体化して取り組んでいかないといけない。現場と医療が連携することが選手の育成につながっていく」
その場には他県の高野連に所属する指導者はもちろん、日本高野連の重鎮も参加していた。今回の新潟県高野連の発表に際して、日本高野連は「初耳」という報道があったが、新潟県の取り組み自体は知っていたはずで、全く予期していなかったということはないはずだ。
日本高野連は基本的姿勢として、重大な決定事項の“主犯”になりたがらない。不祥事などの明らかな問題はさておいて、決定事項についての責任を追及されることを避けるために、「調整役」だという姿勢を貫く。今回の決定も世間では賛否両論があることを承知しながら、すっとぼけたのだろう。
つまり、日本高野連本体は変わりようがないから、新潟県高野連が思い切った策に出たともいえる。野球界の未来を本気で考えたものと高く評価すべきだろう。