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J1昇格を後押しする大宮の化学反応。
戦力は十分、あとは高木監督の手腕。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byJ.LEAGUE

posted2019/01/01 09:00

J1昇格を後押しする大宮の化学反応。戦力は十分、あとは高木監督の手腕。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

J2の優勝争いから大宮は少し離されてしまったが、J1を狙う力は十分に備わっている。

大宮のJ1昇格に足りなかったものは。

 ひるがえって、'18年シーズンのアルディージャである。リーグ3位の65得点を記録した一方で、失点はリーグ11位タイの48だった。得失点差のプラス17はリーグ5位で、奇しくも順位と同じである。

 数字は悪くない。ただ、優勝した松本山雅FCがリーグ最少失点を記録したディフェンスを、2位の大分トリニータがリーグ最多得点の攻撃を強みとしたのに比べると、どこか物足りなさが募るのだ。

 あと少し得点が多ければ、あるいはもう少し失点を抑えられれば、自動昇格圏内の2位に食い込むことはできただろう。表現方法を変えれば、攻撃も守備もあと一歩の詰めが甘かったのである。松本山雅とは2勝分にあたる勝点6差、トリニータとは勝点5差だったが、その1勝や2勝をつかめるかどうかが歓喜と絶望の境界線なのだ。

 新シーズンへ向けたアルディージャの動きは、ここまでのところ控え目と言っていいものだ。即戦力の補強として目につくのは、湘南ベルマーレから完全移籍した石川俊輝ぐらいだろう。ボランチを主戦場に複数ポジションに対応する彼は、大宮のアカデミー出身の27歳である。

戦力的にはJ1昇格はじゅうぶん射程圏内。

 逆説的に考えれば、現有戦力のままでもJ1昇格は射程圏内ということだ。キャリアハイの24ゴールで得点王となった大前元紀やリーグ戦全試合に出場した三門雄大らの主力選手が、ほぼ漏れなく契約を更新している。

 シーズン途中に名古屋グランパスから期限付き移籍し、最終ライン中央を支えた畑尾大翔も正式にアルディージャの一員となった。大前に次ぐ12ゴールをあげた高速アタッカーのマテウス、Jリーグで3シーズンを過ごしてきた長身FWロビン・シモヴィッチの去就は明らかになっていないが、チームの骨格は維持されていると見ていい。

「相手に応じて戦うことも必要になってきますが、だからといって相手に合わせ過ぎてはいけない。アルディージャというクラブが大切にしてきたオーガナイズされたサッカー、コレクティブな戦いを継承しながら、チームとして戦える集団を目ざしていく」

 西脇強化本部長はこう話す。ロアッソやV・ファーレンでの高木監督は、J1での経験や実績の少ない選手の才能を掘り起し、より良い組み合わせを探りあて、チームとしての競争力を高めていった。ひとりひとりの潜在能力をJ1昇格へ結びつけられなかったアルディージャには、最適の人材と言っていい。

【次ページ】 J2は戦力拮抗の戦国時代。

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大宮アルディージャ
高木琢也

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