“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
新潟・早川史哉、病から本格復帰。
「不安なのは体力面より気持ち」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/12/30 08:00
筑波大でトレーニングに励む早川史哉。気持ちのバランスを整え、2019年の戦いに臨む。
来年は試合に出るための段階。
「少しずつだけど、時間が経過するごとに病状も、そしてサッカー選手としても良くなっているのが分かった。焦ることなく“しっかりと取り組めば徐々に良くなる”と思ってきましたが、来年は“詰めの段階”というか、サッカー選手として試合に出るための最終段階に入ります」
「プロ契約凍結の解除」とはすなわち、これまでの“病気から復帰を目指す選手”から、“普通のプロ契約選手”に変わることを意味している。その変化の大きさを彼自身がよく理解していた。
「今年は復帰に向けての段階だったので、練習中にちょっと苦しくなったら『すみません、ここでやめておきます』、『ちょっと下がります』と言えましたが、来年はもう言い訳できない。同じ契約選手としての目線、基準で動かないといけない。
正直、今年はみんなが僕の復帰しようとする姿を温かく見守ってくれたり、サポートをしてくれながら一緒にやってくれていた。紅白戦でも僕がちょっと動けなかったら、周りの選手がそれ以上に動いてカバーしてくれた。11月に(凍結を)解除してからも、まだ登録選手ではなかったので、そういう目は残っていた。でも、来年はそうはいかない」
病気への恐怖心はないが。
もちろん、この1年は周囲の温かさに甘えていたわけではなかった。
「ユース時代からトップチームでプレーするようになってからは、正直そういう目で見て欲しくない想いはありました。変な情けと言うか同情のようなものはありがたい一面もありますが、選手である自分にとっては、あまり嬉しくなかったですね。複雑でした」
だからこそ、来年は覚悟を決めないといけない。だが、彼との会話をさらに続けると、覚悟の裏に彼が抱える大きな不安も見えて来た。ここからはそのリアルなやり取りを見てもらいたい。
早川「病気に対する恐怖心はあまりありません。もちろん再発する可能性もあるけど、そっちよりチャレンジできるかどうかなどの不安はあります。今まで正直、抑えていた気持ちの部分がありました。
それは病気から復帰して、どこかで『生きていれば良い』というか、ちょっと守りの考えを生み出してしまった。病気になるって、そういうことだと思うんです。でも、そこから一歩踏み出さないといけない。攻める自分に対して、そこに自分の気持ちを乗せられるか。そこが一番不安というか、恐怖ですね」