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早稲田実業、平成最後に花園へ。
中心は大学ラグビー部の二世たち。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKyodo News
posted2018/12/27 17:30
文字通り早稲田大学ラグビー部の血を色濃く引いた早稲田実業のラグビー部が、平成最後に花園に登場した。
早大OBの二世選手がチームの中核。
早実の中核を担うのは、大学でラグビー部に所属した父の二世選手が多い。
主将でナンバー8の相良昌彦のお父さんは、今季対抗戦で優勝した早稲田大学の監督、南海夫氏だ。息子は縦への突進力があり、コンタクトに強さもある。大学では下級生からレギュラー争いに絡んでくるであろう人材だ。
注目して欲しいのは、FBの小泉怜史。左足のキッカーで、ゴールキックの成功率は極めて高く、「機を見るに敏」な選手。
「小泉は周りのレベルが高くなればなるほど能力が引き出されると思います。花園でも中心になるでしょうし、きっと、大学でもさらに能力を伸ばすでしょう」
と大谷ヘッドコーチは話す。
また、SO守屋大誠、CTB植野智也の父も赤黒着用経験者。そして、WTBの今駒有喜の父は日本代表の選手だった憲二氏だが、息子のしなやかなランニングスキルは早実アタックの大きな武器になっている。
間違っているけれど、正しいこと。
素質のある選手を抱えてはいるが、決勝で対戦した國學院久我山は「ガリバー」のような存在。倒すまでには様々な葛藤があった。
新人大会では21-64と大敗。ただし、この試合で大谷コーチはこのチームの可能性に気付いたという。
「前半終了間際、スコアは0-12という場面で相手ゴール前でペナルティをもらったんです。僕の感覚ではショットを狙って3点を取り、9点差にして後半勝負という感覚でした。ところが、選手たちは何やら相談を始めてしまって(笑)。結果的にスクラムを選択してトライを取り切ったんです」
大谷ヘッドコーチは、たとえトライを取ったにせよ、この判断は間違いだったと今でも思っている。ただし、選手たちが意志統一をして取り切ったことに、さらに大きな価値があったという。
「この一連のプレーで7点は取りましたが、選手たちは体力を使ってしまい、後半は明らかにフィットネスが落ちました。結果的には3点を狙った方が、勝つための『正解』に近かったでしょう。それでも、僕は学生たちの判断は間違ってはいたけれど、正しかったんだと思います。全員がそれを信じてプレーしたならば、間違っていても正しくなるんです」