リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
メッシもスアレスも認めるビダルは、
仲間のためなら命も差し出せる男。
posted2018/12/20 11:30
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Uniphoto press
わずか2カ月で「チームの問題児」から「キープレーヤーの1人」となったバルセロナのアルトゥーロ・ビダルの話である。
まずは前編。スペインメディアがいうところの「バルベルデの頭痛の種」になるまでだ。事の起こりは9月29日、第7節のA・ビルバオ戦の55分に行なわれた交替だった。待ちに待った2度目の先発出場だったにもかかわらず、後半早々ピッチから出るよう命じられたビダルは、あからさまな態度で不服を示した。
続いて、4日後のCLトッテナム戦。この一戦はビダルにとっては「自分の試合」だった。というのも、バルサ関係者によると夏の移籍交渉の際にクラブ側が「攻守が目まぐるしく入れ替わる、体力がカギを握る試合のためにキミが必要」と伝えていたからだ。なのに、スターティングイレブンに選ばれたのは技巧派のアルトゥールだった。
パウリーニョかビダルか。
87分にようやくピッチに送り出されたビダルは、試合が終わると間もなくインスタグラムで絵文字を使って怒りを露わにした。
さらに第8節のバレンシア戦は、ウォーミングアップを命じられたものの出番なし。今度は絵文字に一文を添えた。
「ユダたちとは喧嘩するまでもない。ヤツらは自らの首を絞めている」
裏切り者を象徴する「ユダ」が誰を指すのか不明だが、この手の“事件”を好物とするメディアはビダルがチームのガンになり得る可能性を示唆するように報じた。
一方、ビダルがこれまでに起こしてきた騒動の一覧をスポーツ紙で目にしていたバルササポーターは「ついに始まったか」と嘆息した。
余談になるが、'17年夏にバルサの監督に就任したばかりのバルベルデの前に、2枚のカードが置かれたことがある。1枚はパウリーニョ。もう1枚はビダル。それは、ボックス・トゥ・ボックス型のMFを欲するバルベルデに対し、クラブが獲得可能と判断して提示した選択肢だった。