リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
メッシもスアレスも認めるビダルは、
仲間のためなら命も差し出せる男。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byUniphoto press
posted2018/12/20 11:30
旺盛な闘争心とハードワーク。バルサのスタイルから考えると異端のビダルだが、彼のような存在が多様性を生む。
不満を話してクラブから注意。
バルベルデは当時の強化担当ロベルト・フェルナンデスと話し合った末、前者を選んだ。その詳細な理由は明らかにされていないが、バルサを去るまでの1年間、パウリーニョが規律に関する問題で監督やクラブを悩ませたことは一度もない。
しかし、ビダルは違った。
10月半ば、アメリカで親善試合を行なうチリ代表に招集されると、そこでもバレンシア戦まで感じてきた不満に言及し、「シーズンは始まったばかりだから今後はレギュラーとして使ってもらいたい」と口にした。
クラブはいよいよ危機感を抱き、戻ってきたビダルに注意した。バルサでレギュラーの座を確約されているのはメッシのみ。すでに出来上がっているチームだから、出場機会はなかなか巡ってこない。我慢が大事だ。
ビダルは了解し、自分の考え方が間違っていたことを認めたという。
ここから後編が始まる。
スアレスが触れた犠牲精神。
メディアやサポーターから懐疑的な視線を向けられるようになり、クラブには戒められたビダルだが、クラブのなかには彼を肯定する者もいた。
31歳で、すでに多くのタイトルを手にしているにもかかわらず、貪欲に出番を求めることでプロのプライドを顕示したビダルの姿勢を評価したのだ。
負けん気や相手が誰であっても食らいついていく気概は、バルサが彼に期待していたこと、そのものでもある。
同様に、チームメイトも変わらぬ信頼をビダルに寄せていた。
「試合に出たい」という気持ちは誰よりも理解できるし、日々の練習に手を抜くことなく向き合っている彼の姿も目にしている。ビダルには、稀にみる犠牲の精神もある。
9月の初め、バルセロナのラジオ番組に出演したルイス・スアレスのビダル評だ。
「あいつは仲間のためなら自分の命も差し出すタイプ。身体能力だけでなく、戦術面でもチームにとって大きな力になるだろう」