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長谷部誠が語ったダービーの凄さ。
乱闘騒ぎや裁判沙汰も普通のこと。 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byUNIPHOTO PRESS

posted2018/12/14 10:30

長谷部誠が語ったダービーの凄さ。乱闘騒ぎや裁判沙汰も普通のこと。<Number Web> photograph by UNIPHOTO PRESS

スタジアムでの発煙筒が肯定されるわけではないが、これも欧州サッカーの一部であることは間違いない。

長谷部が思い浮かべるダービーとは。

 最近、フランクフルトの長谷部誠とダービーについて話をしました。

「自分がダービーといって思い浮かべるのは『さいたまダービー』ですよね。それから、静岡県の藤枝市生まれだから、清水と磐田の『静岡ダービー』かなぁ。あとはやっぱり、『レビアダービー』の盛り上がりは凄いと感じます」

 長谷部は2008年の初冬に浦和からヴォルフスブルクへ移籍し、その後ニュルンベルクを経て2014-2015シーズンからフランクフルトでプレーしています。

「ヴォルフスブルクでプレーしていたときは(約70km離れた)ハノーファーとの一戦がダービー(ニーダーザクセンダービー)として捉えられていたけど、それほど熱狂的には感じられなかった。ニュルンベルク時代はバイエルンとのダービーがあったけどお互いの実力差があって、こちらも中々ダービーの雰囲気を醸すのは難しかったですね。でもね、フランクフルトでは凄いダービーを経験したんですよ」

ダルムシュタット戦で起こった暴動。

 フランクフルトのダービーと言えば、マインツとの『ライン・マインダービー』が有名ですが、彼が挙げたのはこのダービーではありません。

「マインツとの対戦も確かにダービーで、相手サポーターはライバル心をむき出しにしているように感じるけど、フランクフルトのサポーターはそれほど関心がないみたい(笑)。それよりも、フランクフルトの南にあるダルムシュタットとの対戦が凄かったんです」

 フランクフルトとSVダルムシュタット98は、ブンデスリーガで8度しか対戦の機会がありません。ダルムシュタットが1970年代後半から80年代前半、そして2015年から2017年の時期にしかブンデスリーガ1部に在籍していないからですが、その僅かな対戦で両チームは激しい火花を散らしてきました。

 33年ぶりの『ダービーマッチ』となった2015年12月6日の対戦は、ホームのフランクフルトがダルムシュタットに0-1で敗戦。このときは各所が混乱の極みに達したそうです。スタジアム内ではフランクフルトサポーターが発煙筒を焚いたり、相手のチームフラッグを燃やしたり……。

 また知人から聞いた話では、フランクフルト市内のあるレストランがダルムシュタットに所縁のある店名だったそうで、そこにダルムシュタットサポーターが集まっていたところにフランクフルトサポーターが押しかけて乱闘劇が起こったそうです。ちなみに、そのレストランは僕の住居の近くにあり、普段は落ち着いた佇まいでシュニッツェル(ドイツ風カツレツ)が美味しいお店です。

【次ページ】 行政を巻き込んで街への出入り禁止も。

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