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長谷部誠が語ったダービーの凄さ。
乱闘騒ぎや裁判沙汰も普通のこと。 

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島崎英純

島崎英純Hidezumi Shimazaki

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photograph byUNIPHOTO PRESS

posted2018/12/14 10:30

長谷部誠が語ったダービーの凄さ。乱闘騒ぎや裁判沙汰も普通のこと。<Number Web> photograph by UNIPHOTO PRESS

スタジアムでの発煙筒が肯定されるわけではないが、これも欧州サッカーの一部であることは間違いない。

熱狂的だが、危険ではない。

 試合はドルトムントがトーマス・デラネイのゴールで先制するも、後半にキャプテンのマルコ・ロイスがPKを献上。それをダニエル・カリギウリが決めて、シャルケが同点に追いつきます。その後、両軍入り乱れての乱闘劇なども起こりつつ、最後はドルトムントの若き“槍”であるジェイドン・サンチョが決勝ゴールを決めてタイムアップ。

 ゴールを決めたサンチョは左右の人差し指で天を指した後にピッチへ突っ伏し、両手で顔を覆って歓喜にむせびました。イングランド出身の18歳が、試合の重みを知る。彼の仕草からは、脈々と受け継がれる『レビアダービー』の伝統と気高さを感じました。

 ただ僕は、気温3度のなか薄いヒートテックを重ね着して仁王立ちするテデスコ監督を見て、「寒くないのかな? やっぱり33歳だと新陳代謝がいいんだろうか?」と、サッカーと関係のないことをずっと考えていました。

『レビアダービー』はシャルケのフェルティンス・アレナも、ドルトムントのジグナル・イドゥナ・パルクも超満員に膨れ上がるビッグゲームで、毎回熱狂的な空間と化します。アウェーチームのサポーターは地元警察に率いられてスタジアム入りするなど、無闇な衝突を回避すべくホームチームとの動線を明確に分けられます。

 それでも、牧歌的なお祭りの雰囲気もあり、危険な匂いは感じられません。この時期は、試合後に両チームのサポーターがマーケットに立ち寄って、お互いの健闘を称え合う姿も見られます。

ダービーは試合を盛り上げるツール。

 ドイツには『レビアダービー』以外にも、幾つかのダービーマッチがあります。有名なところではバイエルンvs.ニュルンベルクの『ババリアンダービー』。ニュルンベルクは、グロイター・フュルトとの『フランケンダービー』というのもあります。

 また、ハンブルガーSVvs.ブレーメンの『北部ダービー』もありますが、こちらは互いの都市が122kmも離れているので、厳密にはダービーとは言えないような……。でも現在はバイエルンvs.ドルトムントの『デア・クラシカー』のような2強同士の対戦を『ドイツダービー』と称したりしますから、舞台を盛り上げるための動機づけとしてサッカー界が『ダービー』を上手く活用しているのかもしれません。

【次ページ】 長谷部が思い浮かべるダービーとは。

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