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解体セールの増加とマリナーズ。
このギャンブルは成功するのか。
posted2018/12/08 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
シアトル・マリナーズが、本格的な解体セールに突入した。左腕エースのジェームズ・パクストンをヤンキースに売ったあたりから怪しい臭いは立ち込めていたのだが、ここへ来て主力のトレードが相次いでいる。
チームの顔だったロビンソン・カノーは、抑えの切り札エドウィン・ディアスとともに、メッツへトレードされた。オールスター級の遊撃手ジーン・セグラもフィリーズへの移籍が決まった。
代わりに獲得したのは、ほとんどが無名の若手だ。名を知られた選手といえば、ジェイ・ブルース(元メッツ)、カルロス・サンタナ、J・P・クロフォード(ともに元フィリーズ)ぐらいだろう。23歳のクロフォードにはまだ上がり目があるが、ブルース(31歳)やサンタナ(32歳)には大きな期待をかけられない。
2018年のマリナーズは決して弱いチームではなかった。89勝73敗でア・リーグ西地区3位。ただ、ポストシーズン進出が期待されていただけに、経営効率の見直しが喫緊の課題となった可能性はある。
解体→再建→奇跡のサイクル。
それにしてもここ数年、チーム解体→再建→奇跡の復興を当て込む球団の数は、ちょっと多すぎるのではないだろうか。
背景にはもちろん、アストロズやカブスの成功がある。とくにアストロズのギャンブル。
2010年、76勝86敗の冴えない成績に終わったアストロズは、オフシーズンに大胆な解体セールを決行し、マイナーリーガー同然のチームで11年のシーズンをスタートさせた。
結果は56勝106敗。試練はすぐには終わらず、'12年=55勝107敗、13年=51勝111敗という苦難の道がつづく。みなさんお忘れだろうが、'13年の勝率3割1分5厘は、球団史上最低の勝率だった。
当時のアストロズ・ファンに訊くと、ヘッドスライディングが多かったジョナサン・ヴィヤーがレッズ戦で二塁を狙ったところ、相手の二塁手ブランドン・フィリップスの尻の真ん中に潜り込みそうになり、思わず顔をのけぞらせた場面が忘れられないという。笑いたい方は、ヴィヤーの画像をネットで調べてください。