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解体セールの増加とマリナーズ。
このギャンブルは成功するのか。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2018/12/08 11:00
オールスターに8度選ばれて殿堂入り確実とも目されるカノだが、大型トレードでメッツへと移った。
アストロズという好例。
それくらい弱かったアストロズが、じわじわと力をつけていった。'14年=70勝、'15年=86勝、'16年=84勝と地力を蓄え、'17年には101勝を挙げてワールドシリーズを制するまでに至ったのだ。
'18年も、無敵のレッドソックスに屈してALCSで敗退したものの、レギュラーシーズンでは103勝の好成績を残している。
こういう例があるものだから、真似しんぼの大リーグ球団は二匹目のドジョウを狙う。そこそこ勝っていたチームから高年俸のヴェテラン勢を放出し、給与の安い若手を育て上げて、一挙に変身を果たそうという考えだ。
だが、そうは問屋が卸さない。
たとえばレッズは、チーム再建に着手した2015年から18年に至る4年間というもの、毎年94敗以上の黒星を喫している。パドレスも3年連続90敗以上。タイガースは、'17年、'18年と連続で98敗、ホワイトソックスも過去2年は95敗と100敗を記録中だ。
'15年にワールドシリーズを制したロイヤルズでさえ、'18年は104敗という不名誉な成績に落ち込み、地元ファンをあきらめ気分に追いやってしまった。
トレードはメッツの大儲け?
それを思うと、マリナーズの解体セールも決して前途洋々とはいいがたい。なるほど、ネルソン・クルーズ(FA資格取得)やカノーはすでにピークを過ぎているかもしれないが、セグラやディアスといった選手は、まだまだこれから力を発揮しそうなのだ。
とくに24歳のディアスは、ここ2年ばかり等差級数的にセーヴ数を伸ばしている期待の若手だ。'20年に年俸調停資格、'23年にFA資格を得るものの、54万50000ドルという現在の給与は信じがたいほど安い。これはメッツの大儲けというべきではないか。