第95回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
土壇場での成長に期待の上武大学。
日本大学は陸上競技部全体の誇りをかけて。
text by
箱根駅伝2019取材チームhakone ekiden 2019
photograph byYuki Suenaga / AFLO
posted2018/12/13 11:00
「複数の4年生が中心のチーム」
地道な取り組みの成果は予選会での走りに表れていた。従来の20kmからハーフマラソンの距離に延び、終盤に失速する選手が多い中、上武大学は着実に順位を上げ、15km時点で14位から見事な逆転劇を飾ってみせた。
突出したエースはいないが、このチームとしての粘りは武器になる。監督ももちろん、そこは意識しているだろう。
「前回は坂本(佳太)というエースがいたんですけど、今回は複数の4年生が中心のチーム。予選会では主将の太田黒(卓)や熊倉(優介)、大森(樹)らが調子を戻してきて、まとめる走りをしてくれました。他の大学さんとは違うので、俺がやらなきゃと思わなくていい。自分の仕事を一人ひとりがしっかりやることで結果もついてくると思います」
今回は6区を重視した戦略で。
本大会での目標は、悲願のシード権獲得だ。
前々回は総合15位、前回は最下位の20位と高い壁を一度も破れずにいる。箱根駅伝は山あり、谷あり。エースが揃う区間もある。自身も神奈川大学で4年連続箱根路を走り、5区の区間賞を2度獲得した名ランナーであるが、どんな対策を考えているのだろう。
「主力が機能しないと本大会では戦えないと思っているので、うちの主力をもう一段高いレベルに引き上げたい。それと毎年6区でやられているので、今年は6区を重視して戦略を練りたいです。正直、これまでは6区にチームの11番手や12番手を置いていたんですけど、そこに5、6番手の選手を使わないと話にならない。もちろん前半をしっかり乗り切ることが条件ですが、シード権を取るには特殊区間の対策も必要になる。持ち味の粘りを生かそうにも、最初から置いて行かれると話にならないので」
留学生もいなければ、大エースもいない。しかし、シード権獲得という前任者の花田(勝彦)監督時代からの目標を引き下げる気はさらさらない。
チームのスローガンは、「雑草精神(あらくさだましい)の体現へ!」。ここからの2カ月でもっとも成長できる、という監督の言葉を、神妙な面持ちで聞いていた部員たちの静かな闘志に期待したい。