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自由を謳歌しているベンゲルが、
もし今のアーセナルを語ったら。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byUniphoto Press
posted2018/12/04 10:00
エメリ体制でも上位をキープしているアーセナル。ベンゲルは今何を思う?
懸念がもうひとつ、エジル。
もうひとつの懸念材料はメスト・エジルだ。第13節のボーンマス戦だけではなく、先発メンバーから外れるケースが増えてきた。ロシア・ワールドカップの疲労が残っているのか、彼らしいプレーを見せてくれたのは第9節のレスター戦だけだ。
監督が代わればゲームプランも変更を余儀なくされる。生き残るためには、エジルもさらなる鍛錬が必要だ。しかし、レスター戦のパフォーマンスには惚れ惚れする。
本人も「アーセナルでキャリアを終えられたら……」とコメントしているのだから、この心意気に応えるのも監督、スタッフの仕事だろう。
そう、スタッフはガラリと変わってしまった。長年にわたって尽力しているのはアシスタントコーチのスティーブ・ボールドただひとりで、そのほかは大半がエメリのチームだ。当然なのだろう。同じ絵を描ける者同士が切磋琢磨すればいいのであって、何かがうまくいかないときは、チームをよく知るボールドのアドバイスを仰げばいい。
エメリ改革は確実に浸透中。
強化担当も昨シーズン終盤に責任者となったスベン・ミズリンタート、バルセロナで凄腕を発揮したラウル・サンジェイが中心だ。監督がすべてを仕切る時代ではなくなった。当然、冬の市場も彼らフロントの交渉術がアーセナルを左右する。
移籍金が発生するうちにラムジーを手放すのか、足首に重傷を負って今シーズン中の復帰が難しくなったダニー・ウェルベックの代役を探すのか。いずれにせよ、現状を冷静に見極め、無駄な出費だけは避けたいところだ。
昨シーズンまでのアーセナルは、自由闊達な攻撃がセールスポイントだった。しかし、今シーズンは新加入のトレイラが目立つように、前線からのプレス、守備面の整備が図られている。カウンターにも凄みが増したようだ。やはり、高い次元で攻守のバランスを維持することが上位進出の絶対条件だ。エメリ監督の改革は着実に浸透している。