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JC制覇、アーモンドアイは完璧な馬。
ルメール「サッチ・ア・ストロング」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2018/11/26 11:20
年度代表馬を完全に手中に収めたといえるアーモンドアイ。次の目標設定はどれほど高くてもよさそうだ。
1000m時点でほぼ勝利を確信。
「向正面に入ったとき、この馬で、このポジションにいることが楽しかった。そこでレースが終わったようなものだった。ぼくはただのパッセンジャー(乗客)でした」とルメールは笑顔で振り返った。
前半1000mは59秒9。数字だけ見ると平均ペースだが、国枝師はそう見ていなかった。
「(速い時計の出る)この馬場状態では、けっして速くない。それであの位置につけていたので、だいたいイケるかなと思いました」
まだあと1400mも残っていたのだが、国枝師は、ここで早くも勝利をほぼ確信したという。折り合って余力充分。しかも53㎏という軽量のアーモンドアイを、ここからの1400mで負かせる馬がいるはずがない、と考えたのだろう。
単騎で逃げたキセキが3馬身ほどのリードを保って3、4コーナーを回った。
アーモンドアイは、持ったままの手応えでキセキとの差を詰め、直線に入った。キセキの直後につけて、ゴーサインを出すタイミングをはかっている。ラスト300mでルメールの手が動き、外に持ち出して右ステッキが入った。ラスト200mでキセキに並びかけると瞬時にかわし、1馬身3/4差をつけてゴールを駆け抜けた。
ルメール「モンスター。マシーン」
2分20秒6という驚異的なレコードタイムが掲示されると、場内がどよめいた。
普通、こうしたスーパーレコードは、序盤からハイペースになったとき生まれるものだ。が、今回はキセキの川田が後続の瞬発力を封じるため中盤から少しずつペースを上げた結果のレコードだった。
今回の2400mをスタートから3ハロン(600m)ずつ分けて見ていくと、35秒9-35秒8-34秒5-34秒4となる。「普通なら当たり前に押し切れる展開でした」と川田が言ったように、スタミナを武器とするキセキが逃げ切っていておかしくない流れだった。
それを苦もなく差し切り、突き放したアーモンドアイの強さは、感動的でさえあった。
「2番手からとてつもないタイムを出すなんて、いったいどんな馬なんだ?」と外国人プレスが呆れたように訊いた。それに対するルメールの答えがふるっていた。
「モンスター。マシーン。サッチ・ア・ストロング・アニマル(笑)。いつも日本のプレスに言っているんだけど、彼女はほぼ完璧な馬です。どんなポジションからでも競馬ができるし、スピードも瞬発力もスタミナもある。みなが望むものすべてを持っている」
別の外国人記者から国枝師に、「日本馬として初めて凱旋門賞を勝つ馬になれると思うか」という質問が飛んだ。師は笑顔で答えた。
「アブソルートリー・シー・シュド・ウィン(間違いなく勝てるでしょう)。(凱旋門賞を連覇している)エネイブルと一緒にレースをしてみたいですね」