マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
静岡で見つけた才能あふれる高校生。
紅林弘太郎遊撃手と栗田和斗投手。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byShizuoka Koko Yakyu
posted2018/11/26 07:00
駿河総合高の紅林弘太郎内野手。高校野球の世界において「すごい選手がいる」という情報は驚くほどのスピードで拡散するのだ。
大胆にトップを作るハラがくくれれば。
2打席目が終わって、ベンチ裏ですれ違ったとき、「右中間狙ったら、もっともっと打てるのに……」。
思わず口をついて出てしまったお節介アドバイス。
はい…と言って、またひとつ首をかしげたから、だいじょうぶかな? と思って見ていた3打席目に、ライナーがセンターの頭上を襲った。
さらに、続く4打席目のレフト前のライナーの打球がすばらしかった。サードもショートも一歩も動けず、捕球したレフトは腰がひけていた。
詰まることを怖れず、空振りを怖れず、大胆にトップを作るハラがくくれるようになれば、この大型遊撃手はバッティングだってもっともっと恐ろしい選手になれる。
栗田和斗の理想的な投球フォーム。
開花する前の大輪の華を眺めているような、もどかしいような、ワクワクするような気持ちにさせてくれたのは、対戦した知徳高・栗田和斗投手も同じことだった。
試合前、外野をランニングしている姿がいい。
腰が高い位置で保たれて、ポーンポーンと地面をキックするように走る。186cmの高校2年生なら、もっとバランバランなのが普通だろう。
さらに、遠投がいい。
そりゃあ、下半身による体重移動とかできないことはあるが、ムリに体を横に振って反動を使って投げようとしていない。
両肩の延長線上でテークバックと腕の前振りが行われる理想的なフォーム。これが、実戦のマウンドでも変わらない。
きちっと教わっている投手だ。
立ち上がりから2イニングほどは球筋がバラつくが、3回からエンジンがかかってきて、指にかかった速球が増えていく。
スピードにして、130キロ後半がアベレージか。
これだけのサイズがあって、豪快に投げ下ろすのに、強く投げようとし過ぎないのがいい。速い球を投げようとし過ぎないのがいい。
今ある“エンジン”の強さの範囲内で腕を振っているから、フォームに崩れがないし、コントロールにも大きな破綻がない。
このままでいい。あとは、下半身がほぐれてくればくるほど、勝手にスピードも球威も上がってくるはず。
ムリに上げようとして上げたスピードはただ速いだけで、コントロールとか変化球とか、そういう大事なものをどこかに置き忘れてくるものだ。