話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
堂安律の口癖「まだまだっすよ」。
サラーを研究して取り戻した感覚。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/11/22 11:25
11月の連戦でも潜在能力を感じさせた堂安律。しかしこんなところで満足するような男ではない。
「サコくんとやりやすい」
実際、キルギス戦では堂安らが途中出場すると、先発メンバーとの大きな違いを見せた。
「自分が入ったらまずは最低限、守備でハードワークすること。それとボールを持ったらとにかく前にいこうと思っていました。停滞していたし、仕掛ける意識が少なかったのかなと感じていたので、自分が出たら変えてやると。
あと、入る前にサコくんと話をして、際どいところでもサコくん(大迫勇也)に当てていこうと。僕はロシアW杯でサコくんのプレーをずっと見ていたので動きを分かっていますし、サコくんも合わせてくれるのですごくやりやすかったですね」
最初に大迫とピッチに入るやいなや、個人技とスピードで攻撃のクオリティをワンランク上げた。堂安の推進力に引っ張られるような形で、チーム全体も前に連動して動くようになったのだ。それは堂安が入る前には見られなかったシーンだ。
もちろん堂安たちがフレッシュで相手が疲れているという状況もあるが、それを差し引いても変化を付けられる選手は貴重だ。
サラーの映像を見て研究。
そこに南野、中島が入るとさらにスピードアップし、攻撃の出力が変わった。
こうも変わるものなのかとピッチ上の選手、スタンドもファンも感じたことだろう。これ以降、スタジアムは盛り上がり、堂安たちはスタジアムの熱量も変えてしまった。
こうした変化を付けることができるのは、平時から高い意識でプレーし、上手くなるための努力を惜しまないからだ。今はモハメド・サラー(リバプール)のビデオを見て、動きを研究しているという。
サラーは175cmの小柄なレフティだがスピードを活かした突破力がウリだ。それだけではなく、パスセンスもあり、シュート力もある。バイタルエリアをうまく使ってコンビネーションで崩すこともできる万能プレイヤーだ。
堂安も172cmのレフティ。サイズ的にも近く利き足も同じなので、自分のプレーと重ねている。9~10月にかけての堂安は、ファーストタッチとシュートが良くなかった。だが、今は「普通になってきた。良すぎるとあまり良いことがないんで、普通が一番ですよ」とも話す。
それはサラーを始め、いろんな選手の動きを研究し、練習や試合で実践し、自分で自分の感覚を取り戻してきたからだ。