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甲斐拓也を支える捕手用具の匠。
大阪の下町メーカーの技術とは。 

text by

小西斗真

小西斗真Toma Konishi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2018/11/07 10:30

甲斐拓也を支える捕手用具の匠。大阪の下町メーカーの技術とは。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

甲斐は日本シリーズで14打数2安打だったが、シリーズ記録6連続盗塁刺によって、MVPに選出された。

ワンバウンドを止める技術。

 6連続盗塁刺は日本シリーズ新記録。甲斐キャノンという言葉とともに、捕球と送球に注目が集まった。しかし、甲斐は「抑球力」とも言うべきワンバウンドの球を止める技術も優れている。盗塁阻止率や守備率のようにはっきりと数字には表れないが、チームの暴投数が目安にはなる。

 今季レギュラーシーズンでのソフトバンクの暴投は29。これは12球団で広島の26、オリックスの27に次いで少ない。千賀のお化けフォークだけでなく、縦に鋭く落ちるスライダーなどは低めに投げて空振りを奪う。

 高めに浮くくらいならワンバウンドを投げるのが投手の仕事であり、それを止めるのが捕手の使命だ。

 実際、日本シリーズでも何度も甲斐が身を挺してワンバウンドを止めるシーンが見られたが、体に当てても3メートルも転がれば走者は次の塁に進んでしまう。ところが甲斐が体をかぶせた球は、すぐに拾える距離に落ちていたように見えた(今シリーズでの暴投はゼロ)。

ビブソープという合成皮脂。

「プロテクターにも自信があるんです。衝撃吸収素材を使うのは当たり前ですが、その上から合成皮革をかぶせているのがうちのオリジナルです。カーテンにボールを投げると、真下にぽとりと落ちますよね? 元々は相川さんの発案なんですが、それを採用してみたところ、確かに効果はあるんです」

 畠山社長が胸を張るプロテクター、他社製との違いは一目瞭然だった。その特徴は「ビブソープ」という部分にある。各社とも捕手の体への負担を抑え、ボールが遠くへはねないように衝撃吸収素材を前面に装着しているが、ハタケヤマ製はその上にトンネルのように半円の合成皮革をかぶせている。

 それが「ビブソープ」であり、同社が特許を取得している。素材に秘密はないのだが、他社製は衝撃吸収素材がむき出しなのに対して、ハタケヤマ製は覆っている「ビブソープ」がカーテンの役割を果たす。何気ないこの発想が、衝撃吸収力をさらに高めているようだ。顧客の1人で、巨人のバッテリーコーチに就任した相川亮二のアイデアが生かされた。

【次ページ】 まるで『陸王』のような話。

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